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「え?」

「……良いから。早く。」
そわそわする。

「う、うん……。」
少し強い言い方のゆかりに言われるがまま、彼女の目を見る。

真紅の瞳。
やはり、その中にはかすみが反射している。

かすみの脳内にふと、疑問が浮かぶ。
彼女の瞳はこれほどまで鋭く妖しい輝きであっただろうか?
分からない。
何も考えられない。


「……かすみと私は付き合っている。……恋人同士。……だからキスしても問題ない。」
囁くようなゆかりの声。

聞こえるか聞こえないか。
そんなぎりぎりのものが、かすみの耳に届く。

「私と……ゆかりちゃん……恋人同士……。」
ぽつり、ぽつり。

「……そう。」
にやり。
不敵な笑みを浮かべながら、かすみの言葉に同意するゆかり。

喉から手が出るほど欲しかった。
そんな彼女が手に入る。

あと少し。
もう少しだ。
そう確信するゆかり。


「いいえ、かすみさんとゆかりさん、そして私は幼馴染です。」
凛とした声が響く。
それは、エルの口から出たものであった。

舌打ち。
露骨に不満げなゆかり。

「あ、あれ?私……。」
ハッとするかすみ。
キョロキョロと辺りを見渡す。

「気分はどうです?きっとまた貧血でボーッとしてたと思いますが……。」
エルがかすみに言う。

「え?あっ、大丈夫。大丈夫だよ。」

「……か、かすみちゃん?」

「うん?」

「……私って……か、かすみちゃんの何かな?」

「え?」
質問の意図が分からない。
首をかしげるかすみ。

「……わ、私、かすみちゃんの大事な人だよね?」
震え声。

何に怯えているのだろう。
ゆかりを不憫に思うかすみ。

ここはズバリ言ってあげるべきだ。
彼女はそう思った。

「そんなの当たり前でしょう?」

「……っ!?ほ、本当に!?」
目をカッと見開くゆかり。
驚きと期待から、声が大きくなる。

「うん!だって、私とゆかりちゃん……。」

「……うん、うん!」

「と、エルちゃんは幼馴染でしょう?」

「……。」
絶句するゆかり。

「ふっ……。」
二人の会話を聞いていたエル。
つい吹き出してしまった。


なぜ二人がこんな反応をしたのか。
当の本人であるかすみがいまいち分かっていなかった。


「おはよう。」
自身の教室にたどり着いたかすみ。

「おー、おはよう。」
のんびりとした声が反応する。
さくらのものだ。
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