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そんなもので太らないのならば、誰も苦労しない。
助言を貰う身ではあったが、彼女のアドバイスは一切役に立たないだろうな。
そう思うかすみであった。

「そもそもなんですが……。」
エルの言葉。

「うん?」

「私が見る限り、かすみさんはダイエットの必要などないと思いますけど……。」

「……それには同意。むしろ痩せ過ぎている。また倒れないか心配。」
エルの言葉に賛同するゆかり。

貧血で倒れてしまった。
ふたりは、そのことが心配なのだろう。
だから、ダイエットは推奨することは出来ないのだろう。
そう思うかすみであった。
しかし、それでも彼女にも譲れない理由があった。

「じ、実はですね……そのぉ……私のお腹、少し……す、少しばかりですね……ぽ、ぽよんちゃんでしてぇ……。」
自身の腹部を擦るかすみ。
誤魔化すように作った笑みが何とももの悲しい。

「……ぽよんちゃん?ふふ、ゆるキャラみたいで可愛いね。」

他人からだとそうなのだろう。
しかし、本人からすれば死活問題なのだ。

「すみませんが、少し失礼しても……?」
手を伸ばすエル。


その意味は、腹部を触らせてほしいという意味なのだろう。
無言頷き、手をどかすかすみ。

ぷにっ。
「お、おぉ……。」
エルの口から出る感嘆の声。

「だ、だからだよ!はい、もう終わりっ!」
大声を出すかすみ。
そして、自身の腹部を摘まんでいるエルの指を乱暴にどかした。

「……そう、もう終わり。交代して。今度は私。」

完全にエルに気をとられていたかすみ。
ゆかりからの魔の手に気づけなかった。

つん。
ゆかりがかすみの横腹つついた。

「ひゃっ!?」
油断していた。
かすみはつい、可愛らしい悲鳴をあげてしまった。

「……っ!?」
自身がしたことだ。
しかし、目を真ん丸に見開き驚くゆかりであった。

「まぁ、まぁまぁ!何て可愛らしい……。」
一方のエル。
キラキラと目を輝かせてかすみを見ていた。

「もう!止めてよ!」

「……ごめんね。」
えへへ。
悪戯がバレた子供のような笑みを浮かべるゆかり。

「も、もう一度!もう一度今の声をお願いします!今度はきちんと録音しますので!」
手慣れた手つきで携帯電話を操作する。

「駄目だよ!もうっ!……ごちそうさまっ!もう教室に行くからね!」
そそくさと片付け、その場から立ち去るかすみであった。
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