あなたにかざすてのひらを

あさまる

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「これはまずいことになった。」

「……かすみちゃん?」

「どうしました?」

かすみの呟きに反応するゆかりとエル。
彼女らは今、中庭にいた。

ある日の昼休み。
三人で昼食をともにしていたのだ。

「いや、もうすぐ夏休みが始まるじゃん。」

「そうですね。楽しみです。」
この言葉に嘘はないのだろう。
ニコニコと可愛らしい笑顔を見せるエル。

「その……うーん。実はですねぇ……。」
言い辛そうなかすみ。

「……かすみちゃん?」

「一つ聞きたいことがあって……。」

「なんでもおっしゃって下さい!」
ずいっ。
詰め寄るエル。

「……かすみちゃんが私に興味を持ってくれて嬉しい。なんでも答える。」

「えっと、二人ってスタイル良いじゃん。」

「そ、そうですかね……自分では分かりませんが……。かすみさんにそう言って頂けるのは嬉しいです。……ふふふ。」

「……照れる。……えへへ。」

言葉通り。
嬉しそうにそっぽを向く二人。

そんな彼女らの様子に、少し驚くかすみ。
その美貌は、見た者全てを釘付けにする。
幼馴染であるかすみも、ふとした瞬間に見蕩れてしまうほどだ。

聞き飽きるほど聞いたであろう誉め言葉。
それなのに、正直に照れる姿は可愛らしいものであった。

「体型維持の為に何かやってることってあるかな?良かったら教えてほいしなぁーって……。」
有り体に言えば、ダイエットをしようと考えている。
しかし、素人が付け焼き刃で行動しても効率的ではないだろう。
かすみはそう考えたのだ。

身近にいる人物。
かつ、相談を茶化さずに聞いてくれる相手。
かすみにとって、両方を兼ね備えた者は限られてくる。

エルとゆかり。
彼女らは、その二つを兼ねていた。
さらに、こと今回に限って言えば二人以上に適任はいないだろう。

出ているところは出ている。
しかし、引き締まっているところはきっちりと締まっているエル。
小柄で細身なゆかり。
かすみは、是非とも彼女らに教えを乞いたいと思っていたのだ。

「体型維持ですか……。申し訳ありません、特に気にしていることはありませんね。……かすみさん、お力にかれずにすみません。」

気にしていることはない。
かすみには、グサリと刺さるものがあった。

「……よく寝て、よく食べる。そして、よく遊ぶ。この三つが重要。」
ふんす。
鼻息荒く、自信満々な様子のゆかり。
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