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「そ、そんな人……。」
いない。
そう続けようとした。
しかし、声が出なかった。
恐い。
幼馴染にこんな一面があったなど、かすみは知らなかった。
震えが止まらない。
……あれ?
やはりおかしい。
気持ち悪い。
やはり違う。
この違和感は……。
「……私達って……幼馴染だっけ?」
かすみの呟き。
それを最後に、彼女の意識は途絶えた。
「お義母様、お邪魔します。」
「……お邪魔します、お義母さん。」
かすみを背負い、片手で彼女を支えてもう片方で日傘を差すエル。
日傘を差すだけのゆかり。
彼女らは、かすみの家に来ていた。
「あら、いらっしゃ……ど、どうしたの!?かすみに何かあったの!?」
かすみの母が慌てて駆け寄る。
今朝元気に登校した娘が帰宅時には気絶して背負われているのだ。
そんな反応になってしまうのも無理ない。
「……お義母さん、落ち着いて。」
ゆかりの言葉。
「で、でも……。」
「……落ち着いて。」
ジッと、かすみの母を見るゆかり。
真っ赤な瞳がしっかりと彼女を捉えている。
まるで牢屋のようなゆかりのそれ。
その眼中の自分自身と目が合う。
すると、目の焦点が合わず、今にも寝てしまいそうなほど意識が混濁し始めた。
「お義母様、落ち着きました?」
エルが言う。
ゆっくりと、諭すようなものだ。
「……はい。」
「今日、ゆかりさんは下校中に貧血で倒れて私が背負って来ました。分かりましたね?」
「……はい。」
「よろしいです。では、私達はかすみさんの部屋に行きます。良いですね?」
「……はい。」
「かすみさんは私達が看病しますので、安心して下さい。」
「……はい。」
「ですので、お義母様はそのままでいて下さい。」
「……はい。」
エルの言葉、全てを否定せず、肯定するだけであった。
そこには、意志など見えなかった。
まるで、何かに操られ、そう言えと命令されているようであった。
「……行こう。」
エルの言葉が終わったのを確認すると、ゆかりが彼女を先導するようにかすみの部屋へ向かった。
かすみの部屋へ到着した三人。
かすみをすぐにベッドへ寝かせるエル。
それは、妙に慣れた手つきであった。
「……早く終わらせて食事をしよう。」
「これだから極東の蛮族は……。」
「……夜を待たなくても良いんだよ?祖国を追われたお間抜けさん。」
ギロリ。
いない。
そう続けようとした。
しかし、声が出なかった。
恐い。
幼馴染にこんな一面があったなど、かすみは知らなかった。
震えが止まらない。
……あれ?
やはりおかしい。
気持ち悪い。
やはり違う。
この違和感は……。
「……私達って……幼馴染だっけ?」
かすみの呟き。
それを最後に、彼女の意識は途絶えた。
「お義母様、お邪魔します。」
「……お邪魔します、お義母さん。」
かすみを背負い、片手で彼女を支えてもう片方で日傘を差すエル。
日傘を差すだけのゆかり。
彼女らは、かすみの家に来ていた。
「あら、いらっしゃ……ど、どうしたの!?かすみに何かあったの!?」
かすみの母が慌てて駆け寄る。
今朝元気に登校した娘が帰宅時には気絶して背負われているのだ。
そんな反応になってしまうのも無理ない。
「……お義母さん、落ち着いて。」
ゆかりの言葉。
「で、でも……。」
「……落ち着いて。」
ジッと、かすみの母を見るゆかり。
真っ赤な瞳がしっかりと彼女を捉えている。
まるで牢屋のようなゆかりのそれ。
その眼中の自分自身と目が合う。
すると、目の焦点が合わず、今にも寝てしまいそうなほど意識が混濁し始めた。
「お義母様、落ち着きました?」
エルが言う。
ゆっくりと、諭すようなものだ。
「……はい。」
「今日、ゆかりさんは下校中に貧血で倒れて私が背負って来ました。分かりましたね?」
「……はい。」
「よろしいです。では、私達はかすみさんの部屋に行きます。良いですね?」
「……はい。」
「かすみさんは私達が看病しますので、安心して下さい。」
「……はい。」
「ですので、お義母様はそのままでいて下さい。」
「……はい。」
エルの言葉、全てを否定せず、肯定するだけであった。
そこには、意志など見えなかった。
まるで、何かに操られ、そう言えと命令されているようであった。
「……行こう。」
エルの言葉が終わったのを確認すると、ゆかりが彼女を先導するようにかすみの部屋へ向かった。
かすみの部屋へ到着した三人。
かすみをすぐにベッドへ寝かせるエル。
それは、妙に慣れた手つきであった。
「……早く終わらせて食事をしよう。」
「これだから極東の蛮族は……。」
「……夜を待たなくても良いんだよ?祖国を追われたお間抜けさん。」
ギロリ。
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