上 下
15 / 151
2

2ー6

しおりを挟む
「そ、そんな人……。」
いない。
そう続けようとした。
しかし、声が出なかった。

恐い。
幼馴染にこんな一面があったなど、かすみは知らなかった。
震えが止まらない。


……あれ?
やはりおかしい。
気持ち悪い。

やはり違う。
この違和感は……。

「……私達って……幼馴染だっけ?」
かすみの呟き。
それを最後に、彼女の意識は途絶えた。


「お義母様、お邪魔します。」

「……お邪魔します、お義母さん。」

かすみを背負い、片手で彼女を支えてもう片方で日傘を差すエル。
日傘を差すだけのゆかり。
彼女らは、かすみの家に来ていた。

「あら、いらっしゃ……ど、どうしたの!?かすみに何かあったの!?」
かすみの母が慌てて駆け寄る。

今朝元気に登校した娘が帰宅時には気絶して背負われているのだ。
そんな反応になってしまうのも無理ない。

「……お義母さん、落ち着いて。」
ゆかりの言葉。

「で、でも……。」

「……落ち着いて。」
ジッと、かすみの母を見るゆかり。
真っ赤な瞳がしっかりと彼女を捉えている。

まるで牢屋のようなゆかりのそれ。
その眼中の自分自身と目が合う。
すると、目の焦点が合わず、今にも寝てしまいそうなほど意識が混濁し始めた。

「お義母様、落ち着きました?」
エルが言う。
ゆっくりと、諭すようなものだ。

「……はい。」

「今日、ゆかりさんは下校中に貧血で倒れて私が背負って来ました。分かりましたね?」

「……はい。」

「よろしいです。では、私達はかすみさんの部屋に行きます。良いですね?」

「……はい。」

「かすみさんは私達が看病しますので、安心して下さい。」

「……はい。」

「ですので、お義母様はそのままでいて下さい。」

「……はい。」
エルの言葉、全てを否定せず、肯定するだけであった。
そこには、意志など見えなかった。
まるで、何かに操られ、そう言えと命令されているようであった。

「……行こう。」
エルの言葉が終わったのを確認すると、ゆかりが彼女を先導するようにかすみの部屋へ向かった。


かすみの部屋へ到着した三人。
かすみをすぐにベッドへ寝かせるエル。
それは、妙に慣れた手つきであった。

「……早く終わらせて食事をしよう。」

「これだから極東の蛮族は……。」

「……夜を待たなくても良いんだよ?祖国を追われたお間抜けさん。」
ギロリ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

タイツによる絶対領域

御厨カイト
恋愛
お昼前の授業も終わり昼休みになると、いつも私は彼女である澪と一緒に屋上でのんびり話をしながら過ごしていた。今日も私の膝の間に座り、嬉しそうに体を左右に揺らす澪とまったりと雑談をしていたのだが、その話の流れで澪の足を触る事に。しかし、そこで澪は足が弱いことが発覚し……

【R18】やがて犯される病

開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。 女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。 女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。 ※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。 内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。 また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。 更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。

(完結)私の夫は死にました(全3話)

青空一夏
恋愛
夫が新しく始める事業の資金を借りに出かけた直後に行方不明となり、市井の治安が悪い裏通りで夫が乗っていた馬車が発見される。おびただしい血痕があり、盗賊に襲われたのだろうと判断された。1年後に失踪宣告がなされ死んだものと見なされたが、多数の債権者が押し寄せる。 私は莫大な借金を背負い、給料が高いガラス工房の仕事についた。それでも返し切れず夜中は定食屋で調理補助の仕事まで始める。半年後過労で倒れた私に従兄弟が手を差し伸べてくれた。 ところがある日、夫とそっくりな男を見かけてしまい・・・・・・ R15ざまぁ。因果応報。ゆるふわ設定ご都合主義です。全3話。お話しの長さに偏りがあるかもしれません。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

好青年で社内1のイケメン夫と子供を作って幸せな私だったが・・・浮気をしていると電話がかかってきて

白崎アイド
大衆娯楽
社内で1番のイケメン夫の心をつかみ、晴れて結婚した私。 そんな夫が浮気しているとの電話がかかってきた。 浮気相手の女性の名前を聞いた私は、失意のどん底に落とされる。

処理中です...