はりぼてスケバン弐

あさまる

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ある日の休日~閑静な住宅街にて起こる惨劇~

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漸く華子の家に到着した。
その頃には秋姫も合流し、その空気の悪さはより一層増した。

それでも華子ならばこの空気を変えてくれることだろう。
僅かな希望を抱き、蝶華がインターホンを押した。


「いらっしゃーい。どうぞ、どうぞ、入ってー。」
満面の笑み。
心底嬉しそうに彼らを出迎える華子。
そんな彼女の無警戒な姿に、彼らはつい力みが緩むのであった。



「こっちだよ、さささ、お客様ご案内ー。」
彼らを自室へと案内する、るんるんな華子。
ぞろぞろと着いていく丸雄達には会話はなかった。

「ね、ねぇ、華子、華子……!」
華子の耳元で囁くのは秋姫であった。
一番後ろにいたが、そそくさと小走りで彼女の隣に来たのだ。

「うん?どうしたの?」
未だ嬉しさを噛み締めている。

「華子に招かれたのが嬉しくて、意気揚々と来てしまった手前、私が言うのもお門違いなのかもしれないけど……。」
そんな長い前置きを言い、秋姫は続ける。

「……?」
つまり、何を言いたいのだろうか。
引き続き、彼女の声に耳を傾ける。

「私、場違いじゃない?」

「えー?そうかなー?」

「だって、この人達滅茶苦茶恐いよ?」

「秋姫だって恐さなら負けてないよ?」

華子からしたら彼女もかつて大きな脅威であった。
そもそも、彼女達白百合高校の生徒達がきっかけを作らなければこのような大事件は起きなかったはずだ。

「……。」
彼女はたまに、とんでもないことを言ってのける。
つい絶句してしまう秋姫であった。


「さささ、適当に寛いでてね。私、お菓子とかジュース持って来るから。それに、頑張って料理もいっぱい作っちゃったんだからね!」
自室へ案内し終えると、華子はそう言い部屋から出ていこうとする。

そうは問屋が卸さない。
先に動いたのは秋姫であった。

次点で蝶華。
そして、最後に丸雄だ。
彼女に着いていく三人。

「……待って待って待って!置いてかないで、華子、置いてかないで!」
必死な秋姫。

「は、華子さん……!私、あの空気無理!」
珍しく冷や汗が多量な蝶華。

「俺も無理っす!姐さん、お願い、一緒にいてほしいっす!」
涙目の丸雄。

「あはは、皆そんなに友達の部屋だと緊張するのー?」
へらへら。
鈍感な華子。

何とも奇妙な四人パーティーが完成してしまった。
その目的地、キッチン。
そして、獲物は菓子とジュース、そして華子の手料理であった。
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