はりぼてスケバン弐

あさまる

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週末を終えて

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普段、あまり活動的でない華子。
そんな彼女にとって、目まぐるしく活動していた土日。
そんな二日間を終え、月曜日がやって来た。

少しの疲労感が残っている。
週明けから少々疲弊している華子。
そんな彼女が登校し、教室の扉を開けた。

四月、入学した頃からは全く考えることの出来ない出席率。
そんな光景も、華子の目には当たり前となり、普通のこととなっていた。
しかし、この日は少しばかりいつもと違う箇所があった。

いつもはもっと遅めの登校のはずの亥玄。
そんな彼がもういたのだ。

それだけではない。
その違和感に、華子が口を開く。

「おはよう、鯉崎君。……それ、どうしたの?」
華子が自身の口元へ、指を当てて聞く。

亥玄の口元。
そこに、珍しいものが貼られていたのだ。
絆創膏だ。

今まで顔はおろか、身体にも傷は見受けられなかった。
そんな彼が怪我をしているのだ。
気にならないわけがない。

「……何でもない。」
露骨に視線を逸らす。
明らかに何かあったのだろう。

「いや、何でもないわけないでしょ。そんな挙動不審なの流石に見逃せないよ。」

「……。」
少し瞼が大きく開く亥玄。
それは、彼の焦りを表していた。

やはりだ。
何かあった。
確信が出来た。

「そんなことだと番長命令使っちゃうよ?」
華子にしか使えない強引なやり方だ。
しかし、これがここの生徒達には効果的であることを彼女は知っている。

「俺はあいつほど単純じゃないぞ。そんなもの、何でもかんでも使えるわけじゃない。」
不発。
華子の思惑は意図も容易く打ち砕かれた。

「……くっ、そんなにアホじゃなかったかぁ……。」

「おはようっす、姐さん。何の話っすか?」
丸雄、乱入。
噂をすれば影がさすとは良く言ったものだ。

「え?あ、いや、何でもないよ。」

「あぁ、何でもない。」

華子と亥玄。
二人が誤魔化す。
露骨なそれは、却って逆効果ではないだろうか?

「……。……そうっすかー。」
少しの沈黙。
そして、こんなことで誤魔化される丸雄であった。


時は進み、昼休み。
特別に開放された屋上で昼食を食べている華子達。

やはり違う。
その違和感は、華子を苦しめた。

「……。」

「……。」

「……。」

沈黙。
会話が皆無。
聞こえるのは車の走行音や、下から聞こえる談笑の声。

耐えきれない。
我慢出来ずに華子が声を出した。
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