はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
99 / 118
8

6

しおりを挟む
「あぁ、いや……私にとっても授業の復習になるなーって。ほら、よく言うでしょ?人に教えると自分の復習になってより理解出来るって。」
所謂反芻というものだ。
テレビで見齧った程度の知識を華子が言う。

「そ、そっちっすか……。」
がっかり。
丸雄が苦笑いする。

「え?どういうこと?」
いまいち彼の言葉の意味が分からない。

「いや、何でもないっす……。姐さんは姐さんだったってことっす。」

「……?」
意味不明。
それに、何でもないわけがない。
しかし、きっとこれ以上追及しても口を割らないだろう。
華子は、この話題をこれで終わりにすることにした。


「あー……飽きたっす……。」

「え?また?」

先ほどと同じやりとり。
しかも、それから三十分も経っていない。
流石に華子も嫌になってくる。

「だって飽きたんっすもん……。」

「……そうは言ってもなぁ……。」
彼の集中力のなさに関しては些か不服ではあるものの、華子も少なからず手持ち無沙汰となっているのは事実だ。
彼に少しばかり肩入れしてしまう。
しかし、だからといって中断するわけにはいかない。

「……。」
懇願するような視線。
丸雄が、そのニックネームに引けを取らない柴犬のような庇護欲をかき立てられるようなものを華子へ向ける。

「何かないっすか?」

「何かって……何?」

「例えばご褒美とは……どうっすか?」

「ご褒美かー……うん、良いよ。」
どうせ、丸雄のことだ。
ジュースや昼食を奢れくらいのものだろう。
安請け合いする華子。

その時の彼女はうっかり見逃してしまった。
丸雄がこっそりと、ニヤリとほくそ笑んでいた。
まるで、それは作戦通りと言わんばかりのものであった。

今日復習した中から抜粋し、小テストを即席で華子が作成。
そして、それを丸雄が解いていく、という形式だ。

思えば、華子はこの時に疑うべきであった。
面倒だ、面倒だとずっと言っていた彼が、こうもあっさりテストを行うことを受け入れたのだ。
勝算があるに決まっている。


数十分後。
丸雄から用紙を受け取り、華子が答え合わせを行い終えた。

「……う、嘘でしょ……?」
驚愕の声を上げる華子。
彼女の目線の先あるのは、もちろん採点後のテスト用紙だ。

正解と不正解。
割合でいえば、正解の方が多かったのだ。

それも、僅差ではない。
圧倒的に正解数が多かったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エッセイ集を出せば売れる、と聞いたから。

:ななこ。@保育士、休職中
エッセイ・ノンフィクション
保育歴10年目。いろんなことが嫌になっちゃって、心も体も壊れちった。なので今は保育士…というか全部お休みしてます。無理は良くないよ、ホントに。ひとりぼっちの保育士のなれの姿、生活はどんな感じ? 勤務時の子ども達とのエピソードを交えながら、 先が見えない今をちょっぴりのポジティブシンキングとポップに綴るエッセイ。 見ろください。

[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ・21時更新
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

ポンコツヴァンパイアが貧血男子を好きになってもいいですか?

風音
青春
誕生日まで残り僅かの美那は人間界で90日間修行する事になった。その条件は同級生の夏都に三回吸血する事。人間界に来たものの、とんだアクシデントに見舞われてしまいその度に夏都に救ってもらう。だが、そんな彼からは貧血持ちだと秘密を打ち明けられてしまう。スローペースな吸血にしびれを切らした最高司令官は監視役の紗彩を人間界へ。美那は夏都の食事の世話をしながら吸血を試みるがドジな性格が足を引っ張ってしまう。 ※魔法のiらんど、野いちご、ベリーズカフェ、エブリスタ、小説家になろう、ノベマ!にも掲載してます。

聖女の私にできること第二巻

藤ノ千里
恋愛
転生したこの世界で「聖女」として生きていくことを決めた。 優しい人たちに囲まれて、充実した毎日。 それなのに、あなたは遠くて。 今の私にできる生き方で、精一杯悔いのないように生きていればいつしかこの手が届くだろうか。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

彼氏と親友が思っていた以上に深い仲になっていたようなので縁を切ったら、彼らは別の縁を見つけたようです

珠宮さくら
青春
親の転勤で、引っ越しばかりをしていた佐久間凛。でも、高校の間は転校することはないと約束してくれていたこともあり、凛は友達を作って親友も作り、更には彼氏を作って青春を謳歌していた。 それが、再び転勤することになったと父に言われて現状を見つめるいいきっかけになるとは、凛自身も思ってもいなかった。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

多重世界シンドローム

一花カナウ
青春
この世界には、強く願うことで本来なら起こるべき事象を書き換えてしまう力 《多重世界シンドローム》を発症する人間が存在する。 位相管理委員会(モイライ)はそんな人々を管理するため、 運命に干渉できる能力者によって構成された機関だ。 真面目で鈍感なところがある緒方(オガタ)あやめは委員会の調査員。 ある日あやめは上司である霧島縁(キリシマユカリ)に命じられ、 発症の疑いがある貴家礼於(サスガレオ)の身辺調査を始めるのだが……。 え、任務が失敗すると世界が崩壊って、本気ですか? -------- 『ワタシのセカイはシュジンのイイナリっ! 』https://www.pixiv.net/novel/series/341036 を改稿して掲載中です。

処理中です...