はりぼてスケバン弐

あさまる

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「だから、鼬原さん、何とか彼のモチベーションを上げてほしいんだよね!それで、あわよくば復習の手伝いもしてほしいんだ!」

「モチベーション。手伝い。……え?て、手伝い……!?何で!?」
突如不穏な単語が聞こえてきた。
慌てた華子が聞き返す。

「ありがとう、鼬原さん!単位を落とすのは一人でも少ない方が良いからね!頑張ってね!」
力押し。
もう華子には拒否権はないようだ。

「え、え、え?」
何かないか。
この状況を打開できる何か。
戸惑い、焦りながらも必死に思考を巡らせる華子。

「お願い、聞いてくれるんだよね?」
にっこり。
思惑通りで満足げに微笑み華子へ言葉を向ける。

「え、えっと……。」
駄目だ。
打つ手なし。
思考停止。

「ね?」

「……はい……。」
敗北。
黒龍高校の番長が、呆気なく負けてしまった。

こうして、華子は丸雄に授業の復習をすることになってしまった。
この時の彼女はまだ、それがどれほど大変なことか知る由もなかった。


その後。
俯き加減で廊下を歩く華子。

丸雄に復習させる。
どうすれば良いのだろうか。
グルグルと思案を巡らせる。

「姐さん、どうしたんっすか?何か考え事っすか?」

「え?あっ、藤柴君。」
いつの間にか教室まで戻っていた。
丸雄に話しかけられた華子はハッとする。

「なんか思い詰めてたようですけど、何かあったんっすか?」

「いや、そのー……。」
当の本人に相談など出来ない。
流石にそれほどにデリカシーのない行為をすることはない。

「やっぱり鯉崎だけだと不安っすか?」

「え?いや、え?」
突然亥玄の名前が上がり、意味が分からない。

「だって、土曜日のこと、心配してるんじゃないっすか?」

「いや……そういうわけじゃないけど……。」

「なら話してほしいっすよ!」
しびれを切らした丸雄が声を荒らげる。

まさか自身がその悩みの種だと思っていないのだろう。
純粋に心配そうな目をして彼女に訴えかけている。

これは駄目だ。
こんな目立つことをしてはいけない。

「どうした?」

「何の騒ぎだ?」

ぞろぞろ……。
二人の元へ生徒達が集り出す。
当然、彼も来る。

「……藤柴は何をキャンキャン吠えてるんだ?説明しろ、鼬原。」
亥玄までもその中に含まれてしまった。

騒がしいのは丸雄だ。
しかし、なぜ彼がうるさくしているのか。
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