94 / 118
8
1
しおりを挟む
亥玄と秋姫。
華子が、その二人と出かけた翌日。
日曜日。
華子は今、黒龍高校から近い図書館へ来ていた。
彼女の目的。
それは、読書などではない。
目の前にいる者とともに勉強会をする為だ。
その人物。
それは、丸雄だ。
「姐さん、一回休憩しないっすか?」
丸雄からの提案だ。
そんなもの、彼女が素直に受け入れられるわけがない。
「えー?これで何度目?」
当然の反応だ。
「さ、三回……っすか?」
「五回目。流石に一時間も経ってないのに休憩し過ぎだよ。」
苦笑い。
丸雄の集中力のなさに呆れててしまう華子。
「で、でも……っす……。」
「デモもテロもないんでしょ?」
「何っすか、それ?姐さん急にそんなこと言い出して……。」
苦笑いし困惑する丸雄。
「なっ!?」
以前自分が言っていたことなのに、丸雄はそのことを忘れていた。
そして、あろうことかその言動を小馬鹿にしている様子を見せる。
そんな衝撃から荒々しい声が華子の口から出る。
「……まぁ、おふざけはここまでにして、姐さん、これ教えてもらえないっすか?」
「え?あ、うん。えっと、それは……。」
華子自身、決して特別勉強が出来るわけではない。
しかし、それでも丸雄に教えることになっていた。
なぜこのような状況になったのか。
それは、数日前に遡る。
「……まさかここで先生らしいことが出来るなんて……ありがとう、鼬原さん。」
「あはは、いえ……その……心中お察しします。」
黒龍高校の廊下。
授業後の休み時間。
生徒達の提出したノートを職員室へ運ぶ華子。
その隣には教科担任。
若い女性で、華子と話している彼女の表情は柔らかい。
「ありがとう。私、今年からここに赴任って言われた時は絶望しかなくて……。でも、あなたが番長になってくれたおかげで授業出来るようになったからね。」
「あはは……授業……。あれが普通の授業かぁ……。」
華子の脳裏に過るいつもの授業風景。
談笑や、携帯電話を触っている。
それぞれ好き勝手な行動をしている生徒達。
授業を聞いているのは華子のみであった。
「ま、まぁ授業真面目に受けてくれてるのはあなただけなんだけどね……。」
苦笑い。
「それは……そうですね……。」
どう返答して良いか分からない華子は、そう答えざるを得なかった。
「ところで、鼬原さんはこの高校を選んだ理由はあるの?」
華子が、その二人と出かけた翌日。
日曜日。
華子は今、黒龍高校から近い図書館へ来ていた。
彼女の目的。
それは、読書などではない。
目の前にいる者とともに勉強会をする為だ。
その人物。
それは、丸雄だ。
「姐さん、一回休憩しないっすか?」
丸雄からの提案だ。
そんなもの、彼女が素直に受け入れられるわけがない。
「えー?これで何度目?」
当然の反応だ。
「さ、三回……っすか?」
「五回目。流石に一時間も経ってないのに休憩し過ぎだよ。」
苦笑い。
丸雄の集中力のなさに呆れててしまう華子。
「で、でも……っす……。」
「デモもテロもないんでしょ?」
「何っすか、それ?姐さん急にそんなこと言い出して……。」
苦笑いし困惑する丸雄。
「なっ!?」
以前自分が言っていたことなのに、丸雄はそのことを忘れていた。
そして、あろうことかその言動を小馬鹿にしている様子を見せる。
そんな衝撃から荒々しい声が華子の口から出る。
「……まぁ、おふざけはここまでにして、姐さん、これ教えてもらえないっすか?」
「え?あ、うん。えっと、それは……。」
華子自身、決して特別勉強が出来るわけではない。
しかし、それでも丸雄に教えることになっていた。
なぜこのような状況になったのか。
それは、数日前に遡る。
「……まさかここで先生らしいことが出来るなんて……ありがとう、鼬原さん。」
「あはは、いえ……その……心中お察しします。」
黒龍高校の廊下。
授業後の休み時間。
生徒達の提出したノートを職員室へ運ぶ華子。
その隣には教科担任。
若い女性で、華子と話している彼女の表情は柔らかい。
「ありがとう。私、今年からここに赴任って言われた時は絶望しかなくて……。でも、あなたが番長になってくれたおかげで授業出来るようになったからね。」
「あはは……授業……。あれが普通の授業かぁ……。」
華子の脳裏に過るいつもの授業風景。
談笑や、携帯電話を触っている。
それぞれ好き勝手な行動をしている生徒達。
授業を聞いているのは華子のみであった。
「ま、まぁ授業真面目に受けてくれてるのはあなただけなんだけどね……。」
苦笑い。
「それは……そうですね……。」
どう返答して良いか分からない華子は、そう答えざるを得なかった。
「ところで、鼬原さんはこの高校を選んだ理由はあるの?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
タカラジェンヌへの軌跡
赤井ちひろ
青春
私立桜城下高校に通う高校一年生、南條さくら
夢はでっかく宝塚!
中学時代は演劇コンクールで助演女優賞もとるほどの力を持っている。
でも彼女には決定的な欠陥が
受験期間高校三年までの残ります三年。必死にレッスンに励むさくらに運命の女神は微笑むのか。
限られた時間の中で夢を追う少女たちを書いた青春小説。
脇を囲む教師たちと高校生の物語。
深海の星空
柴野日向
青春
「あなたが、少しでも笑っていてくれるなら、ぼくはもう、何もいらないんです」
ひねくれた孤高の少女と、真面目すぎる新聞配達の少年は、深い海の底で出会った。誰にも言えない秘密を抱え、塞がらない傷を見せ合い、ただ求めるのは、歩む深海に差し込む光。
少しずつ縮まる距離の中、明らかになるのは、少女の最も嫌う人間と、望まれなかった少年との残酷な繋がり。
やがて立ち塞がる絶望に、一縷の希望を見出す二人は、再び手を繋ぐことができるのか。
世界の片隅で、小さな幸福へと手を伸ばす、少年少女の物語。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

感情喪失少女
紗霧 鈴
青春
幼稚園の時出会った少女“菓子餅夢李(かしもち ゆい)”
皆のアイドル的な存在の夢李。
そんな彼女が僕に話しかける理由とは?
理由も分からぬまま、彼女は小学校から別れてしまう…
そんなある日再会したのは中学時代!?
彼女の感情を無くして変わり果てた姿に…!?
「私、理由があって感情なくしてるんだよね」
信じられない言葉に僕は…?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる