はりぼてスケバン弐

あさまる

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「どうした?食欲ないのか?それならサラッといける牛丼にでもするか?」
さも当たり前かのように、牛丼がさっぱりと食べれる素麺かのように亥玄が話している。

「ぎゅ、牛丼かぁ……。」

「それはサラッとになるのかな?なんか、私黒高の価値観が分からないよ……。」

苦笑いする華子と秋姫。
華子は再度のやんわりとした拒絶。
そして、秋姫は彼の言動に対する突っ込みをしていた。

「いや、黒高の生徒、皆が皆こんな食欲オバケじゃないから……鯉崎君が異常なだけだから。」
これだけは訂正しておかなければならない。
妙な義務感で華子が口出しをする。

「……なら他の選択肢を出してみろ。」
自身の意見が通らなかったからだろう。
少し不満げに亥玄が華子へと言う。

「ほ、他かぁ……えっと……うーん……。」
思案する華子。
亥玄が納得いくもので、秋姫からも不満がないものは何だろうか。

「あっ、ならもういっそのことハンバーガーで良くない?」

「そうだな。パティも肉と言えば肉だからな……妥協するか。」

思考を巡らせている華子を他所に、二人が言う。
目の前に、全国チェーンのファーストフード店があった。
ハンバーガーが有名な店だ。


結局、そんな適当な理由ではあったものの、そこへ入ることとなった。
すんなりと決まった。

華子としては、それはありがたい。
しかし、やはりというべきか、腑に落ちないのであった。

中学生の頃は一緒に行動していた秋姫。
そんな彼女だが、白百合高校に進学してからすっかり所作が上品になってしまった。
その為、華子には、今目の前でハンバーガーを頬張っている彼女に違和感しかなかった。

そして、亥玄だ。
比較的背が高いが、痩せている。
そんな彼が無数のハンバーガーやフライドポテト等を口へ運んでいく。
目の前にあるそれらが瞬く間になくなっていく。

これだけのカロリーを接種して大丈夫なのだろうか?
そもそも、いつもあれほどの食事量でなぜこの体型を維持出来ているのか。
成長期だからか?

「……ちくしょー……。」
ボソリ。
謎の敗北感に苛まれた華子が口をもぐもぐと動かしながら呟くのであった。
その時に食べたハンバーガーの味を、彼女は生涯忘れることはないだろう。


食事を終え、店外へ出る三人。
今後はどうしようかと思案する。

結果。
皆、特段何をしたいわけでもなく再度歩きだしたのだった。
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