はりぼてスケバン弐

あさまる

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彼には分かっていたのだ。
両校が真の意味で歩み寄ることがいかに難しいことか。
だからこそ無言なのだ。

「鯉崎君?どうかしたの?」

「……いや、何でもない。」
能天気なものだな。
苦笑いし、返答する亥玄であった。

「本当に?心配だよ。」

「……。」
心配。
彼は、真っ直ぐな瞳で見つめてくる華子に、そっくりそのまま返したい気分であった。

本当に何も考えていないだけか。
それとも、あくまでそのようなフリかなのか。

どちらなのかは分からない。
しかし、彼がやることは決まっている。

黒龍高校の頭。
そんな存在である彼女を死守する。
それが、自身に課せられた使命であり、役目である。
亥玄にはそれが分かっていた。

「本当に……?私、心配だよ?」

「……。」
どの口が言うか。
ため息をつく亥玄であった。

この二人は駄目だ。
頼りなさ過ぎる。
そして、それと同時にポンコツ極まっている。
こんなことでは自分がしっかりする他ない。

小動物のようにちょこちょこと動き回る華子達。
そんな二人を見つめ、そう思う亥玄であった。

余談であるが、昔からこのような言葉が存在する。
同じ穴の狢。
そして、類は友を呼ぶ。
恐らく彼は知らないだろう。


翌日の朝。
華子達の教室。
すっかり賑やかだ。

亥玄もその輪の中にいる。
とは言え、彼が言葉を発することはない。

思考する。
決して得意なわけではない。
しかし、これを止めるわけにはいかないのだ。

華子が自主的に様々なことをしている。
彼女のその行動が、良い結果を残している。

それは確かだ。
しかし、彼女が動けば動くほど黒龍高校の安寧を揺るがすリスクが高まるのだ。
そんなことはあってはならない。

目下最大の障害。
それは、三花の存在だろう。
彼女は明確に華子への敵意を示していた。

あの目はまだ諦めてなどない。
必ずまた何かをしてくるはずだ。

亥玄のこれまでの思考。
それが一切合切無駄となることが起きる。

誰が言い出したか分からない。
しかし、その言葉は確かに華子達の耳に届いた。

「ご、ごめん!もう一回聞かせてっ!」
会話に入っていたわけではない。
しかし、そんなことを気にしている場合ではない。
その言葉を再度聞く為に慌てて華子がその輪に入る。

談笑していたクラスメイト達の中。
そんな存在の元へと、ずいずいと飛び込んでいく。
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