はりぼてスケバン弐

あさまる

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「……。」
穏やかな寝息が漏れる。

依然として彼女を支える蝶華。
そんな彼女の口から微笑みが漏れる。

「……全く……仕方のない番長さんだね……。」
横抱き。
所謂お姫様抱っこをし、華子を運んでいく蝶華であった。

ここから華子の特訓が本格的に始まったのだ。
無論、最初はこのように蝶華に手も足も出なかった。
しかし、日に日に強くなっていった。

その結果、どうなったか。
三花など到底及ばない実力を手に入れた華子であった。


「……もう行きなよ。」
華子がため息をつく。

時は戻り、現在。
倒れている三花へ向けて吐き捨てていたのだ。

「……。」
三花は悔しさで声が出ない。

「もしかして、頭だけじゃなくて耳まで悪くなっちゃった?」
挑発。
もちろん、わざとだ。

ここで頭に血が上り、我武者羅に突っ込んでくるようなら今この場で潰すだけ。
ただそれだけだ。

「……お、覚えてなよ……。」
フラフラと立ち上がる。
そして、ボロボロながらも鋭い睨みを向けたままで去る三花であった。

存外冷静であった。
感心半分、ガッカリ半分といったところか。

「……そんなテンプレな台詞、雑魚に見えるからあんまり言わない方が……あぁ、もう行っちゃった……。」
もう挑発する必要はない。
しかし、どうやら華子自身、テンションが上がってしまい制御出来なくなっている。
いつもなら言わないようなことを口走ってしまった。

「あ、あはは……姐さん、意外に辛辣っすね……。」

「……やるな、鼬原。」

タラリ。
冷や汗を流して苦笑いする丸雄。
そして、感心する亥玄であった。

「……よしっ!もう大丈夫だろうし、帰ろっか!」
にっこり。
愛くるしい笑顔を浮かべ、華子が彼らへと言う。


「……お前、いつの間にあれだけ強くなったんだ?」
道中。
口を開いたのは亥玄であった。

「そうっすよ、姐さん!あんなに強いならもっと早く教えておいて下さいよ!」
丸雄も追随する。

「あはは、実はね、蝶華ちゃんに特訓、付き合ってもらってたんだよね。」

「蝶華……?確か、尾谷の妹で……白辰の頭の腰巾着か?」

「こ、腰巾着って……。そんな打算的な考えで一緒にいる訳じゃないよ?」
そう。
彼女の気持ちはそんなものではない。
そんな邪なものでなく、もっと純粋なものなのだ。

「そうなんっすか?」
特に何も考えていないのだろう。
間抜けな声で丸雄が言う。
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