はりぼてスケバン弐

あさまる

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一人になった秋姫。
華子が来る前と同じ、一人ぼっちだ。
しかし、今の彼女には先ほどまでの寂しさはなかった。
本当に大切にしなければならないものが分かったからだ。

「……ありがとう、華子。」

「あっ、姐さん!大丈夫だったっすか?」

「……もう良いのか?」

華子が秋姫の家から出た直後。
少し離れた場所から来た者達。
丸雄と亥玄だ。

「あれ、二人とも?うん、大丈夫だよ。大袈裟なんだから。」
ふふふ。
微笑みながら華子が答える。

「大袈裟なんかじゃないっすよ!姐さんに何かあったら……。」
心配そうにシュンとしている丸雄。
その姿は宛ら小動物のようであった。

「ありがとう、でも本当に大丈夫だから。ほら、怪我してないでしょ?」
極々自然であった。
彼の頭に自然と手が伸びる。
そして、優しく撫でるのであった。

「……へへっ。」

「……で、有耶無耶になってるけど、なんで二人はここにいるのかな?」
ニコニコ。
あくまで笑顔の華子。

それは、核心を突く質問であった。
彼女のそれに、空気が凍る。

さも当たり前かのように話をしていた三人。
しかし、華子は確かに一人で秋姫の家に来た。
少なくとも彼女はそのつもりであった。

それが今はどうだろう。
華子を合わせれば三人になっている。

「そ、そのー……。」
しどろもどろする丸雄。
悪さをしている自覚はあった。
しかし、彼女にこれほど強く追及されると思っていなかったのだ。

「……お前のことが心配だったんだろ。」

「え、え?……藤柴君、そうなの?」

「……。」
無言。
しかし、頷きその意思を示す丸雄であった。

耳まで真っ赤な丸雄。
そこには真偽を疑う余地などなかった。

「そ、そっか……それで、鯉崎君は?まさかそっちも心配してくれたの?」
まさかそんなことはないだろう。
そう思いながら華子が聞く。

冷静に否定するか。
はたまた意外ではあるが、丸雄のように赤面して恥ずかしがるか。
どちらにせよ彼のリアクションには期待出来る。

「そうだ。」

「え?」

「だから、そうだと言ったんだ。悪いか?」

「あっ、いや……悪くない……です。」
攻めの姿勢であった。
そのつもりであった華子。
しかし、亥玄からの想定外の反撃にたじたじになってしまう。

「姐さん照れてるっすー。可愛いー!」

「うっ、うるさいっ!……て言うか、何で私がここに来ること知ってたの!?」
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