はりぼてスケバン弐

あさまる

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黒龍高校の番長。
そんな恐ろしいものに華子がなっていた。

想定の範囲外。
青天の霹靂。
秋姫にとって、それはまさにそんなものであった。

記憶を辿る秋姫。
中学生の頃の華子の様子を思い出す。

彼女はいつも、自分の後ろに隠れる女子中学生だった。
病弱な女子で、休みがちでどちらかと言えば目立たなかった。
そのはずだ。

黒龍高校に進学した。
彼女からそう聞いた時、どうせすぐに不登校になると思っていた。
そして、そのまま自主退学でもするものだと思っていたのだ。

しかし、実際は違っていた。
以前会った時は見違えるほどの美人になり、隣には整った顔の男子生徒がいたはずだ。

一方、自分はどうだろうか。
入学から数ヶ月。
その間を振り返る秋姫。

最初こそ、周囲と歩幅を合わせることが出来た。
上部だけ、仮初めの友人もいた。
しかし、それだけだ。
その程度だ。

何のきっかけか分からない。
しかし、周囲とは決定的に違うものがあったのだろう。
秋姫自身にはそれが分からなかった。

いつの間にか広がっていた華子との格差。
逆転した立場。
それを、秋姫は認めたくなかった。

嫉妬心。
劣等感。
自身よりも劣るはずの華子が自身よりも華々しい高校生生活を満喫している。
秋姫にはそれが堪らなかった。


「……。」

白百合高校。
その教室の一つ。
授業中。

モヤモヤとした心情の秋姫。
集中出来るわけがなかった。

教鞭を振るう教師。
ノートを取るクラスメイト達。
そんな中、秋姫は上の空だ。

この中で、彼女だけがそんな状態というわけではなかった。
巳白も同様であった。
とても集中出来ているとは思えないような挙動だ。

どうにか今後のことを擦り合わせなければならない。
一刻も早く授業が終わってほしいと願う秋姫であった。


待ちに待った休み時間。
席を立つ秋姫。
そして、すぐさま目の前の目的地へ向かう。

「あ、あの!瀧澤君っ!」
巳白の席の前へ立つ。
その声は、緊張しているからだろうか。
やけに大きくそして上擦っている。

「……。」
無気力。
そして無表情な巳白。
そんな彼が彼女を見る。

「えっと……。」

「……。」

「……その……。」
ここで後悔してしまった。
何を話そう。
そんな疑問が今さら出て来てしまった。

「……。」

「き、昨日……その……黒龍の……番長に……会ったんだよね……。」
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