はりぼてスケバン弐

あさまる

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空気を察した二人が立ち上がる。
そして、華子の元へと歩み寄って行った。


「お、お金……。」

「え?」

「お願いっ、お金ならいくらでも出すからっ!」
勢い良く立ち上がる秋姫。
そのせいで、机のグラスを引っかけてしまい、床に落下してしまった。

パリーン!
グラスの破片と氷が床に散らばる。

「……きゃっ!?」
思わず悲鳴を上げる華子。

「お客様!お怪我は!?」
その大きな音に気づいた店員が彼女らの元へと駆け寄る。

「ちょ、ちょっと、秋姫!?落ち着いて!?」

「お願い、華子!私を助けてっ!」
華子の元へ回り込み、彼女の肩を掴む。

「お客様!?」

「秋姫!」

取り乱す秋姫。
そして、それを制止しようとする店員と華子。
もう滅茶苦茶だ。

「お願いっ!もう華子にしか頼めないの!」

「もう止めろ。」
暴走気味の秋姫にかけられた声。
その声の主はそう言うと彼女の腕を掴み、華子から離した。

「痛っ……!離して!あんた誰!?関係ないでしょ!?」

一度は会ったことのある両者。
しかし、どちらもそのことは覚えていないようだった。

「はいはーい、残念ながら俺ら、関係あるんっすよねー。」

「なっ!あ、あんたもっ……!……ねぇ、華子!誰なの、こいつらっ!?」

「そ、その……。」

「ほら、行くぞ、鼬原。」

「え?う、うん。」

「っ!?待って!待ってよ、華子!」

「はいはいはーい!それ以上姐さんを困らせたら俺らが黙っちゃいないっすよー?」
丸雄も加勢し、秋姫を華子から引き離す。

「ちょっと!邪魔しないでって!っていうか姐さんって何!?」

「……お前、こいつがどういう立場なのか知らずに話していたのか?」
ギロリ。
亥玄が睨みを効かす。

「……な、何よ……。」
その鋭い視線に萎縮してしまう秋姫。

「……ごめんね、秋姫。」
一瞬、寂しそうな表情をし、彼女を見る華子。
そしてそのまま出ていこうとする。

「……っ!?ちょ、ちょっと待ってよ、ごめんってどういう……!……華子!」
このままでは華子が帰ってしまう。
なりふり構っていられない。
必死に彼女にしがみつこうとする。

「いい加減にしろ……!お前、こいつが黒高の頭だって知ってるのかって聞いてるんだ。」

「……え?」
亥玄の言葉にパニックになり、動きが止まってしまう。

黒高の頭。
つまり、黒龍高校の番長。
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