はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
53 / 118
4

9

しおりを挟む
華子らから少し離れた客席。
そこで彼女らを監視する二つの視線。
亥玄と丸雄であった。

そそくさと下校した華子。
彼女の異変に二人が気づき、後をつけたのだ。

悪い予感というものは、的中してほしくない時に当たってしまう。
華子が会話している者。
彼女は白百合高校の制服を着ているのだ。

白百合高校。
そこの生徒の一部。
彼らが今回の襲撃に関与した。

華子もそのことを知っているはずだ。
それなのに、彼女は白百合高校の生徒とこのように密かに会っている。

こそこそとしていた。
つまり、それは何か後ろめたいことがあるからだろう。

一介の生徒ならば無視出来る。
しかし、彼女は違う。
その行動一つで黒龍高校全体に多大な影響を及ぼしてしまう。

それが良い方へ転がれば問題ないだろう。
しかし、もしもそれが逆であったら駄目だ。
いくら彼女が番長といえど、そんな愚行は止めなくてはならない。


「……それにしても。」
視線はそのまま華子から逸らさない。
丸雄が口を開く。

「……?」
何を言い出すつもりだろうか。
彼の次の言葉を待つ亥玄。

「姐さんって、俺ら以外に友達いたんっすね……。あんな姿見たことなかったから何か俺、感激っす……。」
しみじみ。
悪気なく本人が聞こうものならば激怒必須な発言をしでかす丸雄。

「……おいこら、止めろ。」
流石に失礼だ。
亥玄が言う。

「……じゃあ逆に聞くっすけど、鯉崎は姐さんに俺ら以外の友達いるって思ってたんっすか?」

「それは……その……。」
言い渋る亥玄。

「でしょ?」
ふふん。
したり顔をする丸雄であった。

「し、しかし……。」
話題を強引に変えようとする亥玄。
その視線の先は、相変わらず華子達を見ている。

「うん?なんっすか?」

「いや、鼬原の話し相手……以前どこかで見た気がするんだ。」
ボソリ。
記憶の端を探るように呟く亥玄。

気がする。
しかし、確証があった。

「……そうっすかー。」
無関心。

「まぁ、良い。」
無関心な彼の様子に気づいた亥玄。
そんな彼もこのことには自らのこととはいえさほど興味はなかった。

亥玄が彼女を以前見た。
それは華子と下校中の時であった。
しかし、そんなことすっかり忘れていた彼であったのだ。


「こうやってまた二人で遊べて嬉しいな……。」
ニコニコ。
依然として嬉しさを隠せない華子。
可愛らしい笑みを浮かべている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、お姉さまへ

一華
青春
この春再婚したお母さんによって出来た、新しい家族 いつもにこにこのオトウサン 驚くくらいキレイなお姉さんの志奈さん 志奈さんは、突然妹になった私を本当に可愛がってくれるんだけど 私「柚鈴」は、一般的平均的なんです。 そんなに可愛がられるのは、想定外なんですが…? 「再婚」には正直戸惑い気味の私は 寮付きの高校に進学して 家族とは距離を置き、ゆっくり気持ちを整理するつもりだった。 なのに姉になる志奈さんはとっても「姉妹」したがる人で… 入学した高校は、都内屈指の進学校だけど、歴史ある女子校だからか おかしな風習があった。 それは助言者制度。以前は姉妹制度と呼ばれていたそうで、上級生と下級生が一対一の関係での指導制度。 学園側に認められた助言者が、メンティと呼ばれる相手をペアを組む、柚鈴にとっては馴染みのない話。 そもそも義姉になる志奈さんは、そこの卒業生で しかもなにやら有名人…? どうやら想像していた高校生活とは少し違うものになりそうで、先々が思いやられるのだけど… そんなこんなで、不器用な女の子が、毎日を自分なりに一生懸命過ごすお話しです 11月下旬より、小説家になろう、の方でも更新開始予定です アルファポリスでの方が先行更新になります

これからの僕の非日常な生活

喜望の岬
青春
何の変哲もない高校2年生、佐野佑(たすく)。 そんな彼の平凡な生活に終止符を打つかのような出来事が起きる……!

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

人魚のカケラ

初瀬 叶
青春
あの娘は俺に言ったんだ 『もし私がいなくなっても、君は……君だけには覚えていて欲しいな』 父親と母親が離婚するらしい。 俺は父親、弟は母親が引き取るんだと。……俺等の気持ちなんてのは無視だ。 そんな中、弟が入院した。母親はまだ小学生の弟にかかりきり、父親は仕事で海外出張。 父親に『ばあちゃんの所に行け』と命令された俺は田舎の町で一ヶ月を過ごす事になる。 俺はあの夏を忘れる事はないだろう。君に出会えたあの夏を。 ※設定は相変わらずふんわりです。ご了承下さい。 ※青春ボカロカップにエントリーしております。

裏切りの果て、愛と嘘の行方

阿院修太郎
青春
『裏切りの果て、愛と嘘の行方』は、大学のサークル内で繰り広げられる三角関係と、友情が崩壊し再生するまでの過程を描いた青春小説です。 物語は、サークルのメンバーである田中美咲、翔太、そして高橋優奈の三人の間で揺れ動く感情を中心に展開します。美咲は脚本家志望であり、映画制作に情熱を注ぐ真面目な大学生。彼女は同じサークルの翔太に次第に惹かれていきますが、翔太は幼馴染の優奈に特別な感情を抱いている様子です。優奈もまた、翔太への思いを募らせていましたが、美咲との友情を大切にしたいと葛藤します。 しかし、優奈は次第に自分の感情を抑えきれなくなり、心の隙間を埋めるためにサークルの別のメンバーである涼と関係を持ってしまいます。この裏切りは、やがて翔太と美咲との関係にも影響を与え、サークル内のバランスは崩れていきます。優奈は自分が翔太の気を引けなかったことで自己嫌悪に陥り、友情も壊れてしまうのではないかという不安に苛まれます。 一方、翔太は優奈と美咲の間で揺れ動きながらも、彼自身もまた自分の気持ちを見失い、美咲に対する思いが恋愛なのか友情なのかに迷います。三人の間に積もる誤解や嫉妬が彼らを引き裂き、一時はすべてが壊れたかのように見えます。 しかし、物語のクライマックスでは、優奈が自分の過ちを認め、涼との関係を清算することで、自分自身と向き合う決意をします。美咲もまた、優奈との友情を取り戻したいと願い、二人は互いの過ちを許し合い、再び手を取り合います。そして、翔太も自分の気持ちに正直になることで、美咲との絆を深め、三人は新たな未来に向かって歩み出します。 この作品は、若者たちが複雑な感情の中で成長し、友情と愛の意味を見つけ出すまでの過程を描いています。タイトルが示すように、裏切りと嘘の果てに、彼らが選び取った愛と友情の行方が、読者の胸に深く刻まれる物語です。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

処理中です...