はりぼてスケバン弐

あさまる

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「まぁ、せいぜいこれから楽しめよー。」
地面に伏す巳白を置いて、彼らはその場から立ち去ってしまった。


「……う、嘘でしょ……?ど、どうしよう。」
震える声。
それは秋姫のものであった。

今しがた、巳白から連絡があったのだ。
内容は先ほど彼が知ったものだ。

不良とは無縁の存在であった。
しかし、今回関わってしまった。
そしてそれを知られてしまった。

無意識に行っていた行動。
彼女もまた、連絡をしようとしていた。


「お願い……出て……!出てよっ!……お願いだからっ……!」
懇願の一人言。
今にも泣き出してしまいそうだ。

プルルルル……プルルルル……。
呼び出し音が何度も鳴る。

何度も祈る秋姫。
依然として鳴り続ける呼び出し音。


「……も、もしもし?」
聞き慣れた声。
それは、電話越しにも分かる位に驚いているようだった。

「あっ、え、えっと……久しぶり……じゃないよね?えっと……華子。」

「うん、どうしたの?」
電話相手は華子であった。

「……あ、えーっと……。」
単刀直入に言うべきか?
言葉に詰まる秋姫。

「……。」

「……。」


沈黙。
両者、黙ってしまった。
そんな空気を破ったのは華子であった。

「最近さ、遊んでないから久しぶりにどうかな?」

「う、うん。」

ぎこちない。
それでも何とか約束をした。


翌日。
放課後。

喫茶店。
壱夏のバイト先だ。
そこに、華子はいた。

席についている彼女。
その目の前には半分ほど減ったココア。

どれほど待っただろうか。
時計を確認。

約束の時間にはまだ早かった。
どうやら気持ちが逸ってしまったようだ。


「ご、ごめん……もしかして、遅れちゃったかな……?」
走って来たのだろう。
そう言う彼女の息は酷く荒かった。

「大丈夫だよ、まだ待ち合わせより早いよ。」
安心させる為の言葉ではあったが、嘘ではない。
華子が微笑みながらそんなことを言う。

「そ、そっか……だったら良かったよ……。」

「あはは……良かった、良かった。」

「……あはは。う、うん良かったよー。」

ぎこちない。
気まずい。
どことなくギスギスしているように見える。

今回会う約束を取り決めた時からぎこちなかった。
しかし、今それが最高潮に来ている。
二人ともそれを痛感していた。


「……分かっているな?」

「もちろんっす……。」
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