はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
41 / 118
3

9

しおりを挟む
「本当に使えない……っ!喧嘩しか能がないのに、その喧嘩で勝つことも出来ないのかっ!?」
巳白が周囲にいる者達へ向け、声を発する。

「……。」
しかし、彼の問いに答える者などおらず、皆やる気のない表情を浮かべているだけであった。

「……聞いてるのかっ!?」

「悪いけどさ、もうお前に着いてけないわ。」
一人が言う。

「は?何言って……?」

「割に合わないんだよ!鯉崎だけでも厄介なのに、尾谷まで絡んでる。こんな端金でやってられねぇって話。分かる?お坊ちゃん?」

「……あぁ、なんだ、そういうことか……。それならそうとはっきり言えよ。」
先ほどまでの激情が嘘だったかのように冷静な表情。
そして、口調。

「……っ!?」
能面のようなそれに、秋姫は恐怖した。
それは、彼女だけでなく、不良の世界で生きてきた彼らも同じであった。

「……ほら。」
財布を取り出す。
そして、そこから無造作に札束を掴むとそのまま乱雑に地面にばらまいた巳白。

「な、何を……。」
戸惑いを隠せない。
震える声。

それは、彼だけでなかった。
周囲にも伝染していく。
恐怖心。
それは、紛れもなくその類であった。

「足りないか?……ほら、これでどうだ?」
更に金をばらまく。

「お、お前……。」

「ほら、お前らも出せ。」
他の白百合高校の生徒達へそう促す巳白。

彼の言葉に皆従い、財布を開く。
そして、同じく札束をばらまいた。


カツン……カツン……。
室内に響く靴音。

「あーあ……変な時に来ちゃったなー……。」
心底残念だ。
そう言わんばかりの少女の声。
それは、この場にいるべきでない者の物であった。

「……へー、これは意外な人物が……。」
ニヤリ。
不適な笑みで彼女を迎える巳白。

「瀧澤君、この子は?」
一体誰だろうか。
秋姫に分かるわけがない。

「あぁ、彼女は黒龍高校の前番長の妹だ。」

「どうも、武蔵野三花でーす。」
何ともやる気のなさそうな声で自己紹介をする。

そう。
三花がこちらへ合流してしまったのだ。

「ど、どうも……。」
ぎこちない会釈で返す秋姫。

「……それで?その後ろの連中は?」
巳白が三花へ問う。

後ろの連中。
彼女の後ろにいる数名のことだ。

制服を着ていない。
恐らく黒龍高校や、白辰高校とは無関係の者達なのかもしれない。

「あぁ、まぁ、手土産ってやつかな?」

「手土産?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

素敵な洋服を作りたい

大羽月菜
青春
和田沙織は高校生。引っ込み思案な性格で、中学の時いじめにあって以来、友達を作らないまま時は過ぎた。高校二年のある日、テレビでファッションインフルエンサーを見て強いあこがれを抱き、そのインフルエンサーのイベントに参加する。次第にデザイナーになりたい夢を抱くように。服飾学科の大学へ行く事を決める。高三になり、友情、少ししたいじめ、進路、淡い恋心。様々な出来事に直面する。 *作品の中で筆者が12㎏のダイエットに成功した方法を、密かに公開します。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

MIYABI

女装きつね
青春
交差点を照らす巨大スクリーン。それを見上げ、ギターを構え持つひとりの女性。彼女の蜘蛛の糸は地面が崩れ落ちたようにぷつりと切れ、鳴る事の無いノイズとなった。

おもいでにかわるまで

名波美奈
青春
失恋した時に読んで欲しい物語です。 高等専門学校が舞台の王道純愛青春ラブストーリーです。 第一章(主人公の水樹が入学するまで)と第二章(水樹が1年生から3年生まで)と第三章と第四章(4年生、5年生とその後)とで構成されています。主人公の女の子は同じですが、主に登場する男性が異なります。 主人公は水樹なのですが、それ以外の登場人物もよく登場します。 失恋して涙が止まらない時に、一緒に泣いてあげたいです。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

花霞にたゆたう君に

冴月希衣@商業BL販売中
青春
【自己評価がとことん低い無表情眼鏡男子の初恋物語】 ◆春まだき朝、ひとめ惚れした少女、白藤涼香を一途に想い続ける土岐奏人。もどかしくも熱い恋心の軌跡をお届けします。◆ 風に舞う一片の花びら。魅せられて、追い求めて、焦げるほどに渇望する。 願うは、ただひとつ。君をこの手に閉じこめたい。 表紙絵:香咲まりさん ◆本文、画像の無断転載禁止◆ No reproduction or republication without written permission 【続編公開しました!『キミとふたり、ときはの恋。』高校生編です】

処理中です...