はりぼてスケバン弐

あさまる

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「さて……。」
仕切り直し。
辰美が口を開く。

「……。」
傾聴する蝶華。

「蝶華。」

「はい。」

「不本意とはいえ、約束をしてしまった。黒高の頭、俺達も守るぞ。」

「はいっ……!」
嬉しさ。
そんな感情の昂りのせいだろうか。
やや声が上擦る蝶華であった。

そのやりとりを最後に、二人もその場から出て行くのであった。
確実に物事が進んでいる。
進んでしまっていた。


「……くしゅん!」
盛大なくしゃみ。
それは、華子の口から出たものであった。

「……わっ!?ね、姐さん?」

「あはは。……ご、ごめん。」

「俺は大丈夫っすけど……大丈夫っすか?」

再度、華子達のいる街中。
可愛らしいくしゃみをした彼女を心配したのは丸雄であった。
亥玄はと言うと、チラリと見るだけであった。

「うん、大丈夫だよ。……誰か私のこと噂してるかな?」
茶化す為の言葉だ。
もちろん、本気でそんなことは思っていない。
しかし、彼は違った。

「そんなもの、当たり前だろ。お前はうちの頭だ。誰かしらの話題に上がってもおかしくはない。」
亥玄だ。

「あ、あはは……そ、そうだよね……。」
たじたじの華子であった。


数日が経過した。
その間も、おかしな動きをする者達はいた。
しかし、彼らが華子達に対して直接何かをするでもなかった。

「……?」

「蝶華ちゃん?どうしたの?」

「い、いや……別に……何でも……。」

華子は、亥玄に言われた通りにしていた。
放課後の現在。
丸雄と亥玄が所用の為、一緒に下校出来なかった。

そんな時に華子が頼ったのが、蝶華であったのだ。
彼女へ連絡すると、端的な返事の後、わざわざ黒龍高校の校門前まで来たのだ。

そんな彼女への礼として、華子は何か食べ歩きの出来るものでも奢ろうと考えていた。
そうして来たのが、先日亥玄に唐揚げを奢ってもらった店であった。

「さ、列動いたよ。行こ、行こ。」

「……う、うん。」

長蛇の列。
それが動き、華子達もそれに倣って進む。
ぎこちないながら華子に対する蝶華のタメ口もきちんと行われていた。

蝶華が気にしていたもの。
それは、やはり怪しげな様子の黒龍高校と白辰高校の生徒達であった。
彼らは蝶華と目が合うまで恐らく華子のことを見ていたのだろう。

見ていた。
そう表現するのは生易しい。
最早それは、監視と言うべきかもしれない。
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