はりぼてスケバン弐

あさまる

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「……姐さん、姐さん。なんか今日、クラス……というか、全体的に黒高内の雰囲気おかしくなかったっすか?」
丸雄が口を開く。
周りに聞こえないようにとの配慮だろうか。
それは小さく囁くものであった。

「……やっぱそう思う?実は私もそう思ってたんだよね。」
彼の言葉に賛同する華子。
それと同時にやはり自身の感覚は間違いではなかったのだと安堵するのであった。

「やっぱそうっすよね!?姐さんもそうおもってたっすよね!?」
一転。
声が大きくなる丸雄。

「うん!そうだよっ!」

珍しく意気投合。
内容はおかしなものだが二人は嬉しそうにしている。

「……。」
華子達の盛り上がりと比例するかのように静かな亥玄。

「鯉崎君……?」

「そういえば、鯉崎も今日おかしかったっすね。何かあったんっすか?」

二人が彼へ言う。
視線の先の亥玄は何時にも増して静かで大人しい。

「……いや……何でもない。」

絶対に何でもないわけがない。
そんなこと、流石の華子と丸雄にも分かった。
しかし、追及することは出来なかった。
それは、あくまで現時点でのことであった。


僅かな異変。
しかし、そう思っていたのは華子達のみであった。
その渦は、彼女らが気づいた頃には大きなものとなっていた。

黒龍高校。
そして、白辰高校。
そのどちらからも停戦協定に反対する者はいた。
皮肉なことに、彼らはそれに反旗を翻すという目的の為に団結していた。


数日後。
時既に遅し。
下校中の華子の目の前。
そこにそれはあった。

視線が合う。
彼らも華子を見ていた。

「……?」
鈍感な彼女。
しかし、これだけは分かる。

彼らの目。
それは、敵意の含んだものであった。
しかし、彼女には一切心当たりがなかった。

決して一触即発という空気ではない。
しかし、それでも不穏なことには変わりなかった。


「……姐さん?」

「……何かあったか?」

「あ、うん。大丈夫だよ。」
その声へ反応する華子。

一人だった彼女。
そんな彼女の元へ、丸雄と亥玄が歩み寄って来たのだ。

「買えた?」

「はいっす!」

「……ほら。」

満面の笑みで返答する丸雄。
そして、あるものを差し出す亥玄。

街へ遊びに来ていた三人。
そんな中、買い食いする為に彼らは列へ並び、華子は別の場所で待っていたのだ。

彼が渡してきたのは唐揚げだ。
紙カップに入ったそれが、そこにあったのだ。
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