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「……他には?この程度なら受け付けないが……。」
舌打ち。
巳白が再び皆へ言う。
「……。」
無言。
彼らには、質問をする気がないということであった。
「何もないなら終わりだ。……くれぐれも頼むな。」
これ以上は時間の無駄だ。
巳白が半ば強引に終わらせるのであった。
ゾロゾロと退室して行く者達。
その中には巳白や秋姫はいなかった。
「それにしても、よくこんなところ見つけたね。」
秋姫が言葉を発する。
誰もいないせいだろうか。
それほど大きな声ではなかったはずの彼女の声。
それが、反響する。
「あぁ、今回の為に俺達で買い取ったんだ。」
「え、か、買い取った……?」
「あぁ、土地ごとね。こんな廃墟だったし、辺鄙な場所だったおかげで破格の安さで拍子抜けだったよ。」
あはは。
少し笑いながら巳白が言う。
「……。」
彼は自分と似ている。
そう思っていた。
しかし、あまりにも住む世界が違いすぎる。
絶句してしまう秋姫。
「と言っても、俺はほとんど出してない。」
「え?」
「他の白百合の連中が大半を出したんだよ。」
「……そ、そっかー。」
彼女のことを考え、咄嗟についた嘘か。
それとも本当のことなのか。
それは、彼にしか分からないことだ。
しかし、秋姫はその言葉に少なからず安心してしまうのであった。
「……。」
無言。
そして、頭上を見上げる。
「瀧澤君?」
そういえば、なぜ彼はここから出ないのだろう。
疑問に思い、口を開く秋姫。
「あ、あぁ、ごめん、ちょっと前のこと思い出しててね……。」
ハッと我に帰る巳白。
「前のこと?」
「あぁ、さっき、白辰高校の頭と鯉崎って奴のことが話題に出たでしょ?」
「う、うん。」
「その、鯉崎って奴、同じ中学だったんだ。」
「そうなんだ、奇遇だね。……実は、私の友達も黒高に行ったんだ。」
「そうなんだね。」
「その鯉崎?って人、友達?」
何気ない質問。
本当に、彼女は他愛ない気持ちで聞いた。
その程度だった。
「違う。」
「…え、え?」
困惑する秋姫。
彼とまともに話したのは数日前だ。
その程度の関係だ。
しかし、これほどに冷たい声を聞いたのは初めてだ。
彼女が戸惑ってしまうのも無理はない。
「……あぁ、違うよ。」
再度の言葉。
しかし、先ほどのそれとは違い、今まで通りの彼の声色であった。
舌打ち。
巳白が再び皆へ言う。
「……。」
無言。
彼らには、質問をする気がないということであった。
「何もないなら終わりだ。……くれぐれも頼むな。」
これ以上は時間の無駄だ。
巳白が半ば強引に終わらせるのであった。
ゾロゾロと退室して行く者達。
その中には巳白や秋姫はいなかった。
「それにしても、よくこんなところ見つけたね。」
秋姫が言葉を発する。
誰もいないせいだろうか。
それほど大きな声ではなかったはずの彼女の声。
それが、反響する。
「あぁ、今回の為に俺達で買い取ったんだ。」
「え、か、買い取った……?」
「あぁ、土地ごとね。こんな廃墟だったし、辺鄙な場所だったおかげで破格の安さで拍子抜けだったよ。」
あはは。
少し笑いながら巳白が言う。
「……。」
彼は自分と似ている。
そう思っていた。
しかし、あまりにも住む世界が違いすぎる。
絶句してしまう秋姫。
「と言っても、俺はほとんど出してない。」
「え?」
「他の白百合の連中が大半を出したんだよ。」
「……そ、そっかー。」
彼女のことを考え、咄嗟についた嘘か。
それとも本当のことなのか。
それは、彼にしか分からないことだ。
しかし、秋姫はその言葉に少なからず安心してしまうのであった。
「……。」
無言。
そして、頭上を見上げる。
「瀧澤君?」
そういえば、なぜ彼はここから出ないのだろう。
疑問に思い、口を開く秋姫。
「あ、あぁ、ごめん、ちょっと前のこと思い出しててね……。」
ハッと我に帰る巳白。
「前のこと?」
「あぁ、さっき、白辰高校の頭と鯉崎って奴のことが話題に出たでしょ?」
「う、うん。」
「その、鯉崎って奴、同じ中学だったんだ。」
「そうなんだ、奇遇だね。……実は、私の友達も黒高に行ったんだ。」
「そうなんだね。」
「その鯉崎?って人、友達?」
何気ない質問。
本当に、彼女は他愛ない気持ちで聞いた。
その程度だった。
「違う。」
「…え、え?」
困惑する秋姫。
彼とまともに話したのは数日前だ。
その程度の関係だ。
しかし、これほどに冷たい声を聞いたのは初めてだ。
彼女が戸惑ってしまうのも無理はない。
「……あぁ、違うよ。」
再度の言葉。
しかし、先ほどのそれとは違い、今まで通りの彼の声色であった。
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