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通学路。
生徒を迎えに来ていた車。
どれもこれもが高級車だ。
そんな物を横目で見ながら歩いて行く。
いつもなら、それが視界に入る度に劣等感で苛立ってしまっていた。
しかし、今日の秋姫には、そんなものはなかった。
それは、隣を歩く巳白のお陰だろう。
少し歩くと、巳白が足を止めた。
どうしたのだろう?
その疑問は、彼女の口を通して音となった。
「……た、瀧澤君?どうしたの?」
「あ、あぁ……ちょっとね……。」
先ほどまでとは違う笑み。
所謂苦笑いというやつだ。
無理をしている。
露骨だ。
彼は少し居心地が悪そうに見える。
視線を彼の見ている方に合わせる。
そこにいたのは黒龍高校の生徒達であった。
「……黒高の人だ……。」
ボソリ。
呟く秋姫。
その時、なぜだか彼女の脳裏には華子の姿が過った。
「は、橋川さん……別の道に行かない?」
慌てての提案。
「か、構わないけど……大丈夫?」
みるみるうちに真っ青になっていく巳白。
彼のことが心配になる秋姫であった。
「あ、あぁ。大丈夫……大丈夫だけど、早く行こう。」
「……うん。」
回り道をし、進む。
その間も、巳白の顔色は芳しくなかった。
無言の時間が続く。
そして、先に口を開いたのは巳白であった。
「ごめん、みっともない所を見せてしまったね。」
苦笑い。
どことなくまだ無理をしているように見える。
「いや、それは大丈夫だけど……具合悪いならどこかベンチにでも……。」
心配だ。
彼へ、一先ずの休息を提案する秋姫。
「大丈夫、あいつらがいなければ大丈夫だから……。」
「……あいつら?黒高の生徒?」
「そうとも言えるけど……その……不良全般がね……。」
「そう……なんだ。」
「実は、前にカツアゲされてさ……本当に、あぁいう野蛮な輩って苦手なんだ……。」
「で、でも……最近はボランティアとかしてるみたいだよ?」
「そう、らしいね。……でも、そんなことであいつらの根本って、本当に変わるのかな?」
「え?」
「結局、本質は変わらないと思うんだ。」
「……。」
本質は変わらない。
彼のその言葉に、秋姫は何も言えなかった。
否定も肯定もすることが出来なかったのだ。
「正直、どう思う?」
「え?ど、どうって……。」
「この現状、不愉快だと思わない?」
「……。」
またしても言葉が出ない秋姫。
生徒を迎えに来ていた車。
どれもこれもが高級車だ。
そんな物を横目で見ながら歩いて行く。
いつもなら、それが視界に入る度に劣等感で苛立ってしまっていた。
しかし、今日の秋姫には、そんなものはなかった。
それは、隣を歩く巳白のお陰だろう。
少し歩くと、巳白が足を止めた。
どうしたのだろう?
その疑問は、彼女の口を通して音となった。
「……た、瀧澤君?どうしたの?」
「あ、あぁ……ちょっとね……。」
先ほどまでとは違う笑み。
所謂苦笑いというやつだ。
無理をしている。
露骨だ。
彼は少し居心地が悪そうに見える。
視線を彼の見ている方に合わせる。
そこにいたのは黒龍高校の生徒達であった。
「……黒高の人だ……。」
ボソリ。
呟く秋姫。
その時、なぜだか彼女の脳裏には華子の姿が過った。
「は、橋川さん……別の道に行かない?」
慌てての提案。
「か、構わないけど……大丈夫?」
みるみるうちに真っ青になっていく巳白。
彼のことが心配になる秋姫であった。
「あ、あぁ。大丈夫……大丈夫だけど、早く行こう。」
「……うん。」
回り道をし、進む。
その間も、巳白の顔色は芳しくなかった。
無言の時間が続く。
そして、先に口を開いたのは巳白であった。
「ごめん、みっともない所を見せてしまったね。」
苦笑い。
どことなくまだ無理をしているように見える。
「いや、それは大丈夫だけど……具合悪いならどこかベンチにでも……。」
心配だ。
彼へ、一先ずの休息を提案する秋姫。
「大丈夫、あいつらがいなければ大丈夫だから……。」
「……あいつら?黒高の生徒?」
「そうとも言えるけど……その……不良全般がね……。」
「そう……なんだ。」
「実は、前にカツアゲされてさ……本当に、あぁいう野蛮な輩って苦手なんだ……。」
「で、でも……最近はボランティアとかしてるみたいだよ?」
「そう、らしいね。……でも、そんなことであいつらの根本って、本当に変わるのかな?」
「え?」
「結局、本質は変わらないと思うんだ。」
「……。」
本質は変わらない。
彼のその言葉に、秋姫は何も言えなかった。
否定も肯定もすることが出来なかったのだ。
「正直、どう思う?」
「え?ど、どうって……。」
「この現状、不愉快だと思わない?」
「……。」
またしても言葉が出ない秋姫。
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