はりぼてスケバン弐

あさまる

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「なら、俺がこれにするんで、鯉崎がこっち、姐さんはこっちのにして皆で分ければ良くないっすか?」
我ながら良いアイディアだ。
そう言わんばありの表情の丸雄。

「……え?良いの?」
彼の提案は、彼女の願ってもいなかったことだ。

「もちろん、良いっすよ!ね?鯉崎?」

「……あ、あぁ。俺は別にそれで構わない。」
事後承諾となった。
しかし、何も文句を言わない亥玄はコクンと小さく頷いた。

「や、やったぁ!……すみませーん!」
素直に喜び、店員を呼ぶ華子。

ニコニコ。
笑顔で注文する。
声も先ほどよりもさらに明るい。

無邪気な笑み。
本当に楽しそうだ。

彼女は二人が今まで接したことのないような存在だ。
きっと、そのせいだろう。

華子のことを知れば知るほどに興味深くなっていってしまう。
そして、知れば知るほど惹かれていってしまうのだ。
しかし、二人はまだ、そんな自身の素直な気持ちを自覚していなかった。


かつて、不良の巣窟とまで言われた二校。
黒龍高校そして、白辰高校。

柄の悪いそこの生徒達。
彼らは、近隣住民からは煙たがられていた。
しかし、それは過去のことになりつつあった。

華子という、不良達にとっての異端の存在。
小さなそれは、やがて大きな渦となり、全体を巻き込んでいく。
結果として、それは周囲への良い影響を与えていった。
しかし、必ずしもその変化が皆に受け入れられるというわけではない。


白百合高校。
それらと比較的近い地域にありながら、真逆な校風。
社長令嬢や、御曹司。
所謂上流階級と呼ばれるような者達が多く在籍している。

そんな中にも普通の家庭出身の生徒達もいる。
華子と同じ中学校出身であり、彼女の友人の橋川秋姫も、その一人だ。

「……。」
登校し、自身の席に座る秋姫。
挨拶はおろか、談笑もない。

今日だけではない。
こんな状態が、長く続いていた。

チラリ。
周囲を見る。
周りは何人かのグループがいくつかに分かれて談笑している。

中学校に通っていた時もあった。
スクールカースト。
声の大きな者の行動が正しくなる。
そして、校内での権力が決まっていく。

その結果、どうなるか。
上へ行けた者達は良い。
しかし、下へ落ちて行った者達はどうか。

視線をさらに動かす。
いくつかの空席。
それは、かつて秋姫と仲の良かったクラスメイト達のものだ。
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