はりぼてスケバン弐

あさまる

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沈黙。
そんな中、再び口を開いたのは、華子であった。

「お、お二人さん、どうもー……。」

「……ど、どうもっすー、姐さん。」

「……あぁ。」

「え、えっとー……。」

「……お前達にも来たんだろ?尾谷から。」
単刀直入。
ぎこちない様子の二人へそう言ったのは、亥玄であった。

「あっ、うん。」

「そうっすね。」

「なら決まりだな。」

「あっ、うん。」

「そうっすね。」

決まったようだ。
あっさり。
ずいぶん呆気ない。

拍子抜けしてしまう華子であった。
しかし、何はともあれ良かったとも思うのであった。

時は進み、週末。
集合時間より少し早い。
しかし、集合場所として決められたところに、華子はもう来ていた。


時間がのんびりと流れている。
悪くない雰囲気だ。
むしろ、華子にとって、これは好ましいものだ。

少ないながら、周囲を歩く人達は確かにいる。
その中には華子と同年代の者はいない。
つまり、まだ丸雄や亥玄も来ていないということでもある。


「……おーい、姐さーん!」
彼女の耳へ、少し離れた場所から聞こえる声。
丸雄のものだ。

「あっ!藤柴君、おはよう。」
ニコッ。
彼女の顔から自然な笑みが出る。
そこに、以前までのぎこちなさはなかった。

「おはようっす、姐さん!早いっすね!」
朝から元気一杯だ。
明るい丸雄の声と態度。

「そうかな?でも、藤柴君も早いよね。」
彼につられて元気に応対する華子。

「……えへへー。」

まだ時間に余裕がある。
その中で二人は揃った。

「後は鯉崎君だけだね。」

「いや、鯉崎なら姐さんの隣にいるっすよ?」

「……え?」

「……おう。」

「きゃっ!?」
ビクッ!
その場で跳び跳ねる華子。

全く気配を感じなかった。
しかし、丸雄が言ったように、すでに彼女の隣には亥玄がいた。

「……おはよう。」

「う、うん……おはよう。」
ドキドキ……。
驚いたせいで心拍数が上がる。
そんな彼女が挨拶を返した。

何はともあれ三人揃うことが出来た。
皆、集合時間よりも前に集まった。
これ以上ここにいても意味はない。
華子達は歩き出した。

語弊を恐れずに言えば、やはりどうしてもこの商店街は閑散としている。
しかし、そこを歩く人々はそれぞれ談笑したり、ゆっくり買い物をしたりと楽しげだ。

そんな笑顔に溢れた場所を歩く三人。
華子の顔から自然と笑みが溢れる。
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