はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
21 / 118
2

2

しおりを挟む
「……え?お、尾谷先輩……?」
それは、心司から来たものものであった。

彼と連絡先を交換していない。
それなのに、こうして連絡が来た。

蝶華から聞いたのだろうか?
それとも、他のルートだろうか?
考えたくない。
しかし、きっと後者の方が確率が多そうだ。

授業中である。
しかし、彼女はその内容がどうしても気になってしまい、確認するのだった。
どうやら、すっかり黒龍高校に染まってしまっていたようだ。

その内容は、彼女にとって理解するのがやや難しいものであった。
今度の休日のボランティアは華子達には欠席してもらいたいというものであった。
それだけならばまだ良い。
しかし、ここからがよく分からないのだ。

華子達。
つまり、彼女一人で、ということではなく、丸雄や亥玄もだ。
その三人で、黒龍高校に近い商店街へ向かってほしい。
そして、一日かけて堪能するようにとのことであった。

彼女の記憶が間違いでなければ、あそこはもうすっかり活気の失われた場所のはずだ。
原因は分かりきっている。

時代の波。
数年前に建てられた近所のショッピングモール。
仕方がない。
廃れていくのは仕方がないことなのだ。

そんな場所へ向かえという意味。
そして、そこを堪能しろという意味。
それが、彼女には分からなかったのだ。


「……うへぇ……。」
何のつもりなのだろうか。
つい、そんな苦々しい声が漏れる。

なぜ知っているのか。
そんな疑問が浮かぶ。

それは、華子が隠していた秘密についてであった。
中学生だった頃のもので、所謂黒歴史というやつだ。

なぜそんな代物を、彼が知っているのか。
そして、そんなものをわざわざ伝える意味は何なのか。

半ば脅しである。
そんな内容に思えた。

この事実を皆にバラされたくなければ、言うことを聞けということなのだろう。
こうなれば、彼女の選択肢は一つしかない。


チャイムが鳴る。
授業が終わった。

残念ながら後半の授業内容についての記憶は、彼女にはない。
当然のことだろう。

作戦会議。
気まずいなどと言っていられる状況ではない。
早速二人の元へ向かおうとする華子。
しかし、それは彼らも同じだったようだ。

「……あ、あはは……。」

「……っす。」

「……。」

立ち上がり、教室の真ん中で見合う三人。
気まずい。
しかし、皆話をしたいのは一緒なようであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

素敵な洋服を作りたい

大羽月菜
青春
和田沙織は高校生。引っ込み思案な性格で、中学の時いじめにあって以来、友達を作らないまま時は過ぎた。高校二年のある日、テレビでファッションインフルエンサーを見て強いあこがれを抱き、そのインフルエンサーのイベントに参加する。次第にデザイナーになりたい夢を抱くように。服飾学科の大学へ行く事を決める。高三になり、友情、少ししたいじめ、進路、淡い恋心。様々な出来事に直面する。 *作品の中で筆者が12㎏のダイエットに成功した方法を、密かに公開します。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

MIYABI

女装きつね
青春
交差点を照らす巨大スクリーン。それを見上げ、ギターを構え持つひとりの女性。彼女の蜘蛛の糸は地面が崩れ落ちたようにぷつりと切れ、鳴る事の無いノイズとなった。

おもいでにかわるまで

名波美奈
青春
失恋した時に読んで欲しい物語です。 高等専門学校が舞台の王道純愛青春ラブストーリーです。 第一章(主人公の水樹が入学するまで)と第二章(水樹が1年生から3年生まで)と第三章と第四章(4年生、5年生とその後)とで構成されています。主人公の女の子は同じですが、主に登場する男性が異なります。 主人公は水樹なのですが、それ以外の登場人物もよく登場します。 失恋して涙が止まらない時に、一緒に泣いてあげたいです。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

花霞にたゆたう君に

冴月希衣@商業BL販売中
青春
【自己評価がとことん低い無表情眼鏡男子の初恋物語】 ◆春まだき朝、ひとめ惚れした少女、白藤涼香を一途に想い続ける土岐奏人。もどかしくも熱い恋心の軌跡をお届けします。◆ 風に舞う一片の花びら。魅せられて、追い求めて、焦げるほどに渇望する。 願うは、ただひとつ。君をこの手に閉じこめたい。 表紙絵:香咲まりさん ◆本文、画像の無断転載禁止◆ No reproduction or republication without written permission 【続編公開しました!『キミとふたり、ときはの恋。』高校生編です】

処理中です...