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「もうそんなものはどうだって良い。」
「え?そうなの?」
「あぁ。だから……何て言えば良いか、分からないが……ここの頭がお前になって良かったと思っている。」
「……鯉崎君。」
「おーい、姐さーん!……ついでに鯉崎、ジュース買って来たっすよ。」
「あっ、うん、ありがとう。」
「俺のもよこせ。」
「はい、姐さんどうぞ!……ほら、鯉崎っ!」
丸雄は華子には丁寧に、亥玄には投げつけるように缶を渡した。
「ありがとう、藤柴君。」
「危なっ!?お前……。」
何とか掴む亥玄。
「いえいえっす、姐さん。……何すか?わざわざ買って来てやったんっすよ?うん?」
華子と亥玄。
二人に対して露骨に態度を変える丸雄。
「……あ、ありがとう。」
苦虫を噛み潰したような顔。
亥玄が丸雄へ決して素直ではない礼を言う。
「それで良いっす、それで。」
不満を物理的にぶつけることが出来た。
それで、多少は溜飲が下がった丸雄であった。
缶の蓋を開ける華子。
そして、一口飲む。
爽やかな酸味。
オレンジの旨さが彼女の喉を通っていく。
亥玄も缶の蓋を開ける。
それは、その時に起きた。
彼が頼んでいたのはコーラだ。
つまり、炭酸だ。
丸雄はそれを彼に対して投げ着けた。
それに、きっとその前も振っていただろう。
意図的か、偶然か。
それは丸雄にしか分からない。
勢い良く噴出する。
地球には重力がある。
常識だろう。
上へ向かったそれは、当然降ってくる。
その結果、どうなったか。
亥玄の頭に降り注ぐコーラ。
呆気に取られ、口をあんぐりと開ける華子。
この後の展開が読めた丸雄がここから逃げようとする。
「……おいっ。」
亥玄の低い声。
「ひっ!?」
丸雄は恐怖で動けない。
「何か言うことはないか?」
「……す、すみませんっす……。」
「そうか、悪いことをした自覚はあったんだな。」
「……あっ。」
しまった。
これがわざとだとバレてしまった。
真っ青になる丸雄。
「行くぞ。」
ガシッ。
亥玄は立ち上がると、丸雄の首根っこを掴み歩き出した。
「……ほ、ほどほどにねー。」
苦笑いし、二人を見送る華子。
「ね、姐さん!?助けてほしいっす!お願い!助けて!姐さーん!」
徐々に小さくなる丸雄の声。
そんな彼に対して合掌するしか出来ない華子であった。
空を見上げる華子。
疲労感はある。
しかし、今のやり取りで嫌なことは吹き飛んだ。
「え?そうなの?」
「あぁ。だから……何て言えば良いか、分からないが……ここの頭がお前になって良かったと思っている。」
「……鯉崎君。」
「おーい、姐さーん!……ついでに鯉崎、ジュース買って来たっすよ。」
「あっ、うん、ありがとう。」
「俺のもよこせ。」
「はい、姐さんどうぞ!……ほら、鯉崎っ!」
丸雄は華子には丁寧に、亥玄には投げつけるように缶を渡した。
「ありがとう、藤柴君。」
「危なっ!?お前……。」
何とか掴む亥玄。
「いえいえっす、姐さん。……何すか?わざわざ買って来てやったんっすよ?うん?」
華子と亥玄。
二人に対して露骨に態度を変える丸雄。
「……あ、ありがとう。」
苦虫を噛み潰したような顔。
亥玄が丸雄へ決して素直ではない礼を言う。
「それで良いっす、それで。」
不満を物理的にぶつけることが出来た。
それで、多少は溜飲が下がった丸雄であった。
缶の蓋を開ける華子。
そして、一口飲む。
爽やかな酸味。
オレンジの旨さが彼女の喉を通っていく。
亥玄も缶の蓋を開ける。
それは、その時に起きた。
彼が頼んでいたのはコーラだ。
つまり、炭酸だ。
丸雄はそれを彼に対して投げ着けた。
それに、きっとその前も振っていただろう。
意図的か、偶然か。
それは丸雄にしか分からない。
勢い良く噴出する。
地球には重力がある。
常識だろう。
上へ向かったそれは、当然降ってくる。
その結果、どうなったか。
亥玄の頭に降り注ぐコーラ。
呆気に取られ、口をあんぐりと開ける華子。
この後の展開が読めた丸雄がここから逃げようとする。
「……おいっ。」
亥玄の低い声。
「ひっ!?」
丸雄は恐怖で動けない。
「何か言うことはないか?」
「……す、すみませんっす……。」
「そうか、悪いことをした自覚はあったんだな。」
「……あっ。」
しまった。
これがわざとだとバレてしまった。
真っ青になる丸雄。
「行くぞ。」
ガシッ。
亥玄は立ち上がると、丸雄の首根っこを掴み歩き出した。
「……ほ、ほどほどにねー。」
苦笑いし、二人を見送る華子。
「ね、姐さん!?助けてほしいっす!お願い!助けて!姐さーん!」
徐々に小さくなる丸雄の声。
そんな彼に対して合掌するしか出来ない華子であった。
空を見上げる華子。
疲労感はある。
しかし、今のやり取りで嫌なことは吹き飛んだ。
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