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今回、初回と違うことがあった。
それは、華子に声をかけてくる生徒達の数だ。
皆、彼女と近づきたい、連絡先を知りたいとのような下心を持っていた。
それは、彼女にも分かるほどのもので、辟易してしまっていたのだ。
彼女だけではあっという間に流れに負けてしまっていただろう。
しかし、二人が睨みを効かせていた為、なんとか無事であったのだ。
二人が守っていた。
しかし、それでも限界がある。
彼女の近くにいながらも、掃除はしなければならない。
どちらの意識も彼女から外れてしまったことが度々あった。
その隙に、彼女の周りには生徒達が集まってしまったのだ。
少しすれば丸雄達が助けに来た。
それでも何人もの生徒達が入れ替わり立ち替わりで彼女に話しかけていたせいで疲労してしまった。
所謂人疲れというやつだ。
ようやく終わる頃にはこのように疲労困憊状態となってしまったのだ。
「……よっこいしょ。」
年齢に不釣り合いな声、そして言葉が華子の口から出る。
「何か飲み物買ってくるっす。姐さんは何が良いっすか?」
「え?そんな、悪いよ。」
「なら、俺はコーラな。」
「……なんで鯉崎が……。」
お前の分は聞いていない。
丸雄は、そう言いたげな視線を亥玄へと送る。
「ほら、鼬原も早く言ってやれ。」
彼のジトーッとした視線など気にせず亥玄が言う。
「え、あ、えっと……じゃあオレンジジュースお願い……。」
「了解っす!」
華子からのオーダーを聞くと、そそくさと自販機へ駆け出す丸雄であった。
その後ろ姿は、さながらフリスビーを取りに行く小型犬のようであった。
微笑ましい。
彼の姿につい口角が上がってしまう華子。
「……どうだ?」
「え?」
隣に座る亥玄。
彼が突然疑問をぶつけて来た。
それが何に対してなのか分からない華子は聞き返す。
「黒龍の頭、どうだ?楽しいか?」
「……どうだろう?ちょっと分かんない……かな?」
苦笑い。
それが華子の出せる精一杯の答えであった。
「……俺は……武蔵野双葉を倒し、ここの頭になろうと思っていたんだ……。」
「うん……。」
「それで、お前が頭になったから……。」
「え、え?」
まさか、だから今度はこちらをターゲットにするということか?
慌てる華子。
「ふっ、そんなわけないだろ。」
コツン。
軽くデコピンをする亥玄。
「……あぅ……。」
それは、華子に声をかけてくる生徒達の数だ。
皆、彼女と近づきたい、連絡先を知りたいとのような下心を持っていた。
それは、彼女にも分かるほどのもので、辟易してしまっていたのだ。
彼女だけではあっという間に流れに負けてしまっていただろう。
しかし、二人が睨みを効かせていた為、なんとか無事であったのだ。
二人が守っていた。
しかし、それでも限界がある。
彼女の近くにいながらも、掃除はしなければならない。
どちらの意識も彼女から外れてしまったことが度々あった。
その隙に、彼女の周りには生徒達が集まってしまったのだ。
少しすれば丸雄達が助けに来た。
それでも何人もの生徒達が入れ替わり立ち替わりで彼女に話しかけていたせいで疲労してしまった。
所謂人疲れというやつだ。
ようやく終わる頃にはこのように疲労困憊状態となってしまったのだ。
「……よっこいしょ。」
年齢に不釣り合いな声、そして言葉が華子の口から出る。
「何か飲み物買ってくるっす。姐さんは何が良いっすか?」
「え?そんな、悪いよ。」
「なら、俺はコーラな。」
「……なんで鯉崎が……。」
お前の分は聞いていない。
丸雄は、そう言いたげな視線を亥玄へと送る。
「ほら、鼬原も早く言ってやれ。」
彼のジトーッとした視線など気にせず亥玄が言う。
「え、あ、えっと……じゃあオレンジジュースお願い……。」
「了解っす!」
華子からのオーダーを聞くと、そそくさと自販機へ駆け出す丸雄であった。
その後ろ姿は、さながらフリスビーを取りに行く小型犬のようであった。
微笑ましい。
彼の姿につい口角が上がってしまう華子。
「……どうだ?」
「え?」
隣に座る亥玄。
彼が突然疑問をぶつけて来た。
それが何に対してなのか分からない華子は聞き返す。
「黒龍の頭、どうだ?楽しいか?」
「……どうだろう?ちょっと分かんない……かな?」
苦笑い。
それが華子の出せる精一杯の答えであった。
「……俺は……武蔵野双葉を倒し、ここの頭になろうと思っていたんだ……。」
「うん……。」
「それで、お前が頭になったから……。」
「え、え?」
まさか、だから今度はこちらをターゲットにするということか?
慌てる華子。
「ふっ、そんなわけないだろ。」
コツン。
軽くデコピンをする亥玄。
「……あぅ……。」
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