はりぼてスケバン弐

あさまる

文字の大きさ
上 下
15 / 118
1

8

しおりを挟む
「まぁ、うちの頭の鼬原が言ったことだからな!しっかりやってみせるぜ!」

「あはは、それは頼もしいなー。」
素直に喜んで良いものか分からない。
しかし、それでも皆が真剣にやってくれるのであれば良いことなのかもしれない。
そう思うことにした華子であった。


「……。」

「……。」

華子達のやり取りを見る二つの存在。
それはあまりにも不機嫌なものであった。
本人らは気づいていない。
しかし、それでも周囲にはすぐに分かってしまった。

丸雄と亥玄。
彼らはイライラしながらトングでゴミを拾っていたのだ。
しかし、その視線は常に華子へと向けられており、掃除をしようという気持ちは二の次であった。

「鯉崎、鯉崎っ……!」

「……なんだ?」

「やっぱり、俺達姐さんの近くにいた方が良かったんじゃないっすか?」

「……しかし、同じ場所を三人で密集してやるのは効率が悪いだろ。」

「そ、それはそうっすけど……あっ、ほら!あいつら姐さんに近寄って行くっすよ!?」

「何っ!?藤柴、行くぞ!」
手のひら返し。
亥玄が声を荒らげる。

「うっす!」
彼に同意する丸雄が一緒に歩き出す。


「なぁ、華子ちゃん、アプリのID教えてくれよ。」

「え、えっと、取り敢えずゴミ拾いを……。」
そもそも彼は誰だろうか。
恐らくクラスメイトですらないだろう。
黒龍高校の生徒であることは分かるが、そんな者に安易に連絡先を教えることは出来ない。

「やるからさ、ほら、これで良いんだろ?」
適当に足元にあったゴミをトングで掴み、華子へ見せつける。

「そ、それはそう……だけど……。」
なかなか引き下がってくれない彼に圧を感じる。
たじろぐしか出来ない華子であった。

このままでは駄目だ。
押し負けてしまう。


「はいはーい、お二人さーん!」
パンパン!
手を叩きながら二人に近づく。
それは、丸雄であった。

「何か揉めているのか?」
丸雄の隣には、亥玄もいた。

「げっ!?藤柴、鯉崎……な、何でもない。じゃ、じゃあ俺はもう行くから。華子ちゃん、今度教えてくれな。」
二人の姿を見てそそくさと逃げるように立ち去るのであった。


「おやおや、これは面白いことになりそうだなー……。」
既にパンパンにゴミの詰まったゴミ袋をいくつも作り上げてていた心司。
そんな彼が、ニヤニヤしながら華子達を見て呟くのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おもいでにかわるまで

名波美奈
青春
失恋した時に読んで欲しい物語です。 高等専門学校が舞台の王道純愛青春ラブストーリーです。 第一章(主人公の水樹が入学するまで)と第二章(水樹が1年生から3年生まで)と第三章と第四章(4年生、5年生とその後)とで構成されています。主人公の女の子は同じですが、主に登場する男性が異なります。 主人公は水樹なのですが、それ以外の登場人物もよく登場します。 失恋して涙が止まらない時に、一緒に泣いてあげたいです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

花霞にたゆたう君に

冴月希衣@商業BL販売中
青春
【自己評価がとことん低い無表情眼鏡男子の初恋物語】 ◆春まだき朝、ひとめ惚れした少女、白藤涼香を一途に想い続ける土岐奏人。もどかしくも熱い恋心の軌跡をお届けします。◆ 風に舞う一片の花びら。魅せられて、追い求めて、焦げるほどに渇望する。 願うは、ただひとつ。君をこの手に閉じこめたい。 表紙絵:香咲まりさん ◆本文、画像の無断転載禁止◆ No reproduction or republication without written permission 【続編公開しました!『キミとふたり、ときはの恋。』高校生編です】

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

めくるめく季節に、君ともう一度

雨ノ川からもも
青春
 生前、小さな悪事を積み重ねたまま死んでしまった瀬戸 卓也(せと たくや)は、地獄落ちを逃れるため、黒猫に転生する。  その自由さに歓喜したのもつかの間、空腹で行き倒れているところをひとりの少女に助けられ、そのまま飼われることに。  拾われて一ヶ月ほどが経った頃、ふたりにある不思議な出来事が起きて……? 君に出会って、大嫌いだった世界をちょっとだけ好きになれたんだ―― 春夏秋冬に起こる奇跡 不器用なふたりが織りなす、甘く切ない青春物語 ※他サイトにも掲載中。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...