はりぼてスケバン弐

あさまる

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「まぁ、うちの頭の鼬原が言ったことだからな!しっかりやってみせるぜ!」

「あはは、それは頼もしいなー。」
素直に喜んで良いものか分からない。
しかし、それでも皆が真剣にやってくれるのであれば良いことなのかもしれない。
そう思うことにした華子であった。


「……。」

「……。」

華子達のやり取りを見る二つの存在。
それはあまりにも不機嫌なものであった。
本人らは気づいていない。
しかし、それでも周囲にはすぐに分かってしまった。

丸雄と亥玄。
彼らはイライラしながらトングでゴミを拾っていたのだ。
しかし、その視線は常に華子へと向けられており、掃除をしようという気持ちは二の次であった。

「鯉崎、鯉崎っ……!」

「……なんだ?」

「やっぱり、俺達姐さんの近くにいた方が良かったんじゃないっすか?」

「……しかし、同じ場所を三人で密集してやるのは効率が悪いだろ。」

「そ、それはそうっすけど……あっ、ほら!あいつら姐さんに近寄って行くっすよ!?」

「何っ!?藤柴、行くぞ!」
手のひら返し。
亥玄が声を荒らげる。

「うっす!」
彼に同意する丸雄が一緒に歩き出す。


「なぁ、華子ちゃん、アプリのID教えてくれよ。」

「え、えっと、取り敢えずゴミ拾いを……。」
そもそも彼は誰だろうか。
恐らくクラスメイトですらないだろう。
黒龍高校の生徒であることは分かるが、そんな者に安易に連絡先を教えることは出来ない。

「やるからさ、ほら、これで良いんだろ?」
適当に足元にあったゴミをトングで掴み、華子へ見せつける。

「そ、それはそう……だけど……。」
なかなか引き下がってくれない彼に圧を感じる。
たじろぐしか出来ない華子であった。

このままでは駄目だ。
押し負けてしまう。


「はいはーい、お二人さーん!」
パンパン!
手を叩きながら二人に近づく。
それは、丸雄であった。

「何か揉めているのか?」
丸雄の隣には、亥玄もいた。

「げっ!?藤柴、鯉崎……な、何でもない。じゃ、じゃあ俺はもう行くから。華子ちゃん、今度教えてくれな。」
二人の姿を見てそそくさと逃げるように立ち去るのであった。


「おやおや、これは面白いことになりそうだなー……。」
既にパンパンにゴミの詰まったゴミ袋をいくつも作り上げてていた心司。
そんな彼が、ニヤニヤしながら華子達を見て呟くのであった。
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