はりぼてスケバン弐

あさまる

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「猪突猛進というか……無鉄砲というか……まぁ、なんだ……。」

「はい……。」

「来ると……良いな……。」

「そう……ですね……。」

二人は、窓の外を流れる雲へと視線を動かす。
それは、現実逃避に近いものであった。


時は進み、数日後。
週末。

華子は飛鳥へ話を着けた後、クラスメイト達から順番に伝えていった。
なるべく多くの者へと周知させるべく、努力した。
それは彼女だけではない。
丸雄や亥玄、その他数名の生徒達も協力した。
つまり、事前にやれることはやったということだ。


「こ、これは……。」
目の前の光景に、言葉が出る華子。

ボランティア初日。
つまり、一番大事な日と言っても過言ではない日だ。

黒龍高校の正門前。
それが集合場所だ。
そこに集合時間に間に合うように辿り着いていた。

丸雄、亥玄はもちろん来ていた。
問題は他の者達だ。


結論。
数名の生徒達は集まっていた。
しかし、それは彼女が声をかけた者達のほんの一握りの数だ。

皆が来てくれたわけではない。
それでも彼女は嬉しかった。

「皆っ、おはようっ!来てくれてありがとねっ!」
満面の笑み。
建前などのない素直な表現。

それは、彼らにとってあまりにも愛らしいものであった。
不良である彼らが、自身らにそんなものを向けられた経験はなかった。
その結果、どうなったか。

「……お、おう……。」

「……うっす……。」

皆、赤面。
そして、俯く。

「……?」
皆どうしたのだろうか。
キョトンとし、首を傾げる華子。
しかし、そんな仕草すらも可愛らしくなってしまい、状況を悪化させてしまう。

「ね、姐さん、姐さん!おはようっす!俺らもいるっすよ!」

「……おう、重役出勤ってやつか?一人だけ遅いな。」

奥から丸雄と亥玄が小走りでやって来た。
そんな彼らは、どこか焦っているように見える。

「おはよう、二人とも!……時間通りだと思うんだけどなぁ?ごめんね、今度はもう少し早く来るね。」

「……嘘だ、馬鹿。時間通りだ。」

「そうっすよ、姐さん時間ピッタリっす!」

更に距離を詰めて来る二人。
そして、華子の両サイドへと来ると、そこで止まった。
左右を固められる華子。

「……どうしたの?二人とも、何か今日近くない?」
彼らの異変には、流石の華子でも気づく。

「そうか?」

「気のせいじゃないっすか?」
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