はりぼてスケバン弐

あさまる

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「……どうやら黒高の頭がお前に用事があるようだ。それが終わってからで良い。」
華子がこれからすることが分かったのだろう。
辰美が言う。

「え?し、しかし……。」
彼の言葉に動揺を隠しきれない蝶華。

「大丈夫だ、お前を置いて行きはしない。外で待っている。」
当たり前だろう。
そう言いたげな表情で彼が言う。

「……ありがとうございます。」
心なしか安堵したような表情になる蝶華。
彼に対して深々と頭を下げるのであった。


「俺らも外に行ってるぞ。」

「そうっすね……。」

亥玄の言葉で黒龍高校の者達もその場を後にするのであった。
後ろ髪引かれる思いの丸雄も彼らと出ていった。


「えっと……。」

「黒龍の頭になったんですね。」

「あっ、うん……。その……まぁ、成り行きでと言うか、何と言うか……。」

「成り行き?」

「あ、そ、それはまた今度ということで……その……。」

「どのような要件ですか?」

「この前みたいにタメ口が良いなー……なんて……。」
本題に入る前の世間話。
しかし、これも華子にとっては大事なものだ。

「いえ、黒高の頭になった方にそれは失礼なので……。」

「で、でも……。」

「……。」

「……。」

無言。
今はもう、二人きりの為、無音になってしまった。
このままでは日が暮れてしまう。
多少強引でも話を進めなければならない。

「そ、そうだよね!?」

「……はい?」
突如の大声。
彼女のそれに驚きながらも蝶華は疑問の意図をぶつける。

「私、黒龍の頭だもんね!怒らせちゃ駄目だもんね!?」

「な、何を……?」

「だ、だからっ……!」

「だから?」

「そのっ!タメ口にしてほしいって言ってるんだからタメ口にしてって言ってるの!」

「な、なるほど……?」
決して納得しているわけではない蝶華。
しかし、混乱しながらも無理矢理理解し、納得しようとしている。

これは、このままごり押しで行けるのではないか?
彼女の反応に、華子は活路を見出だした。

「そう!尾谷さんの大好きな白辰の番長さんもきっとそう言うよ!」
これで決まりだ。
確信する華子。
しかし、そう簡単にはいかない。

「なっ!?わ、私が辰美さんをだ、だだだ大好きって!?何言ってるの!?」
混乱が大混乱へと成り果てた。
赤面を通り越し、真っ赤っか。
彼女の顔は心配になるほどに紅潮していた。
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