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「い、いえ……。」
辛うじて返事をすることが出来た華子。
しかし、それでもこれがやっとであった。
「……で、では……双方相違はないということで……よろしいですか?」
蝶華の質問に、辰美と華子が頷く。
これにより、正式に黒龍高校と白辰高校の停戦協定が締結した。
これでようやく平和になる。
安堵する華子。
そんな彼女からはついため息が漏れてしまうのだった。
安心したからだろうか。
心にゆとりを持てるようになった。
そして、視野が広くなる華子。
ふと、今まできちんと言えなかったことがあったことを思い出した。
ちょうど良い機会だ。
それを今回、言ってしまおう。
「あ、あのっ!」
華子が口を開く。
静かな館内。
そんな中で彼女の声が必要以上に響いてしまった。
予想外の自身の声に、恥ずかしさが込み上げる華子。
黒龍高校の番長である彼女の声は、異常な注目の的となっていた。
「……どうした?」
皆の代表として聞いたのだろう。
辰美が質問する。
今さら何を言い出すのだろうか。
固唾を飲む亥玄と丸雄。
それは黒龍高校の者達だけでなく、白辰高校側もであった。
「あの、お礼を……。」
「……礼?」
「はい。えっと……尾谷さんに……。」
視線を蝶華へ向ける華子。
「え?私に……ですか?」
突如の指名。
まるで心当たりのない彼女は、困惑を隠しきれない。
「以前その……襲撃された時に助けてもらって……きちんとお礼を言えてなかったので……その……ありがとうございました。」
敢えて白辰高校の生徒からの襲撃であるとは言わずに華子が言葉を紡ぐ。
「いえ……その……。」
チラリ。
辰美を見る蝶華。
どうやら何か言いにくいことがあるようだ。
「……構わない。」
辰美からの許可が降りた。
「鼬原さん、お礼は結構です。」
はっきりと言う蝶華。
ため息。
それは、辰美の口から出たものであった。
どうやら彼の考えとは違ったようだ。
「で、でも……。」
「以前も話しましたが、元々はこちら側の不手際。ですので気にしないで下さい。」
「そ、そっか……。」
これ以上この話題を引っ張るのは無意味だろう。
それなら、早々に終わらせた方が良いはずだ。
華子はそう結論付けるのであった。
「蝶華。」
「はい。」
首だけ辰美の方へ向く蝶華。
「黒高の頭が直々にここまで言ってくれてるんだ。こちらに非があったことだが、素直に受け取っておけ。」
辛うじて返事をすることが出来た華子。
しかし、それでもこれがやっとであった。
「……で、では……双方相違はないということで……よろしいですか?」
蝶華の質問に、辰美と華子が頷く。
これにより、正式に黒龍高校と白辰高校の停戦協定が締結した。
これでようやく平和になる。
安堵する華子。
そんな彼女からはついため息が漏れてしまうのだった。
安心したからだろうか。
心にゆとりを持てるようになった。
そして、視野が広くなる華子。
ふと、今まできちんと言えなかったことがあったことを思い出した。
ちょうど良い機会だ。
それを今回、言ってしまおう。
「あ、あのっ!」
華子が口を開く。
静かな館内。
そんな中で彼女の声が必要以上に響いてしまった。
予想外の自身の声に、恥ずかしさが込み上げる華子。
黒龍高校の番長である彼女の声は、異常な注目の的となっていた。
「……どうした?」
皆の代表として聞いたのだろう。
辰美が質問する。
今さら何を言い出すのだろうか。
固唾を飲む亥玄と丸雄。
それは黒龍高校の者達だけでなく、白辰高校側もであった。
「あの、お礼を……。」
「……礼?」
「はい。えっと……尾谷さんに……。」
視線を蝶華へ向ける華子。
「え?私に……ですか?」
突如の指名。
まるで心当たりのない彼女は、困惑を隠しきれない。
「以前その……襲撃された時に助けてもらって……きちんとお礼を言えてなかったので……その……ありがとうございました。」
敢えて白辰高校の生徒からの襲撃であるとは言わずに華子が言葉を紡ぐ。
「いえ……その……。」
チラリ。
辰美を見る蝶華。
どうやら何か言いにくいことがあるようだ。
「……構わない。」
辰美からの許可が降りた。
「鼬原さん、お礼は結構です。」
はっきりと言う蝶華。
ため息。
それは、辰美の口から出たものであった。
どうやら彼の考えとは違ったようだ。
「で、でも……。」
「以前も話しましたが、元々はこちら側の不手際。ですので気にしないで下さい。」
「そ、そっか……。」
これ以上この話題を引っ張るのは無意味だろう。
それなら、早々に終わらせた方が良いはずだ。
華子はそう結論付けるのであった。
「蝶華。」
「はい。」
首だけ辰美の方へ向く蝶華。
「黒高の頭が直々にここまで言ってくれてるんだ。こちらに非があったことだが、素直に受け取っておけ。」
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