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辰美を見て黙っていれば良い。
文字にすれば単純で簡単なことに思えるかもしれない。
しかし、それこそが大変なのを、今の彼女には分からなかった。
黒龍高校と同じく不良校。
そんな白辰高校で、実力で番長となった者だ。
そんな彼を見続けるなど、華子には到底無理な話だろう。
そして、時は戻る。
この時に亥玄に言われたことを実践しようとしていた華子。
ただ見ているだけ。
ただ視線を合わすだけ。
それだけのことだ。
至極単純な行為だ。
大丈夫。
きっと出来る。
彼女はそう思っていた。
結論。
そんなものは彼女には不可能であった。
怒りなどは感じられない。
しかし、それでも辰美を見ることは出来ない。
圧力がある。
それも今まで黒龍で感じた物とは格が違うものだ。
いくら不良に慣れたとは言え、華子には辰美を見続けることは出来なかった。
一度彼と視線が合った。
しかし、すぐに華子は目を逸らしてしまった。
もう一度挑戦するが、またも逸らしてしまう。
そう何度もやるわけにはいかない。
その結果、どのようにしたか。
あろうことか、天井を見つめることにしてしまったのだ。
愚行も愚行。
それがむしろ良かったのかもしれない。
他の不良とは雰囲気がまるで違う。
それが何か得体の知れない存在として、白辰高校の生徒達の目に写ったのだ。
「今回、我々白辰高校と皆様黒龍高校の停戦協定を締結させる為に……。」
周囲の者達とは全く合わない雰囲気。
蝶華の作り出した厳かなそれは、より一層緊張感を高めさせた。
ゴクリ。
もしかすると、近くにいた者には聞こえてしまっていたかもしれない。
生唾を飲む華子。
長い。
あまりにも長過ぎる。
未だに続く蝶華の挨拶。
それを遮ったのは、彼女の身内であり、白辰高校の番長でもある辰美であった。
「……蝶華。」
「……っ!はい。」
彼に呼ばれ、今までノンストップに垂れ流していた言葉を止める蝶華。
「長い。」
単刀直入。
「し、失礼しました……。これにて私からは以上です。」
彼女は赤面し、そそくさと引っ込んだ。
そんな彼女の姿にクスクスと笑い声が漏れる。
黒龍高校側からではない。
白辰高校側から出たものだ。
どうやら彼女が自分の世界に入ってしまうのはいつものことのようだ。
「……黒高、すまなかったな。」
辰美が華子を見る。
真っ直ぐ鋭い視線だ。
文字にすれば単純で簡単なことに思えるかもしれない。
しかし、それこそが大変なのを、今の彼女には分からなかった。
黒龍高校と同じく不良校。
そんな白辰高校で、実力で番長となった者だ。
そんな彼を見続けるなど、華子には到底無理な話だろう。
そして、時は戻る。
この時に亥玄に言われたことを実践しようとしていた華子。
ただ見ているだけ。
ただ視線を合わすだけ。
それだけのことだ。
至極単純な行為だ。
大丈夫。
きっと出来る。
彼女はそう思っていた。
結論。
そんなものは彼女には不可能であった。
怒りなどは感じられない。
しかし、それでも辰美を見ることは出来ない。
圧力がある。
それも今まで黒龍で感じた物とは格が違うものだ。
いくら不良に慣れたとは言え、華子には辰美を見続けることは出来なかった。
一度彼と視線が合った。
しかし、すぐに華子は目を逸らしてしまった。
もう一度挑戦するが、またも逸らしてしまう。
そう何度もやるわけにはいかない。
その結果、どのようにしたか。
あろうことか、天井を見つめることにしてしまったのだ。
愚行も愚行。
それがむしろ良かったのかもしれない。
他の不良とは雰囲気がまるで違う。
それが何か得体の知れない存在として、白辰高校の生徒達の目に写ったのだ。
「今回、我々白辰高校と皆様黒龍高校の停戦協定を締結させる為に……。」
周囲の者達とは全く合わない雰囲気。
蝶華の作り出した厳かなそれは、より一層緊張感を高めさせた。
ゴクリ。
もしかすると、近くにいた者には聞こえてしまっていたかもしれない。
生唾を飲む華子。
長い。
あまりにも長過ぎる。
未だに続く蝶華の挨拶。
それを遮ったのは、彼女の身内であり、白辰高校の番長でもある辰美であった。
「……蝶華。」
「……っ!はい。」
彼に呼ばれ、今までノンストップに垂れ流していた言葉を止める蝶華。
「長い。」
単刀直入。
「し、失礼しました……。これにて私からは以上です。」
彼女は赤面し、そそくさと引っ込んだ。
そんな彼女の姿にクスクスと笑い声が漏れる。
黒龍高校側からではない。
白辰高校側から出たものだ。
どうやら彼女が自分の世界に入ってしまうのはいつものことのようだ。
「……黒高、すまなかったな。」
辰美が華子を見る。
真っ直ぐ鋭い視線だ。
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