甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「でも、同じこと言うけど、争い事は良くないと思うの。きっと、私達が争えば翔子も悲しむ。」

「……で?」
結論を早く言え。
そんな意味の含まれたものだ。

「私が上、梨華ちゃんが下を担当する……それでどう?」

「……。」

「嫌なら逆でも良い。」

「……。」
なるほど。
悪くない折衷案だ。
無言のまま、首を縦に降る梨華であった。

「よしっ、交渉成立。」

「……うん。……あ、そうだ、一個言っておかなきゃいけないことがある……。」
梨華が小声でボソッと呟く。

「うん?何?」
どうしたんだろう?
梨華の言葉を聞き漏らさないように彼女の口元へと自身の耳を近づける。

「確かに私は今、翔子ちゃんしか眼中にない……けど、あんたのことも見てるから……。今度翔子ちゃんを悲しませたらどんな手を使っても必ず後悔させるから……絶対に……。」
ギロリ。
翔子の部屋着を鼻に押しつけながら美成実を睨み付ける梨華。

「……は、はい……。」

スンスン……スンスン……。
二人は翔子が帰ってくるまでの間楽しんだ。


所変わり、放課後の瀬部高校。
オレンジの光に照らされた教室。
そこには翔子と真優だけが残っていた。

遠くの方から声が聞こえる。
運動場を使って部活動をしている生徒達のものだろう。
しかし、それらの喧騒も、彼女らには関係ない。

「……。」

「……。」

無言の二人。
しかし、そこには梨華と美成実の間に流れるような険悪な空気が流れているわけではない。
どちらかと言えば、甘ったるい空気だ。

「今日、弓浜さん来なかったね……。」
最初に口を開いたのは真優であった。

それは美成実を心配した意味で言ったわけではない。
翔子と話す為のきっかけにすぎない。

「そうだね……あはは……。」
苦笑いする翔子。

なるほど。
彼女の反応で分かった。
美成実は何かやらかしたのだろう。

「ど、どうする?もう帰る?」
ここにきて何も話せない。
話題作りも出来ない。
語彙力もまるでない。
憎らしい。
自身のコミュニケーション能力の低さを恨む真優。

「え?も、もう帰る?」

「……んぇ?」
想定外の返事に困惑する真優。

翔子もまた、帰りたくないと思っているのだろうか?
まだ二人きりでいたいというのだろうか?

「そ、その……もうちょっと真優ちゃんと一緒にいたいなぁ……なんて……あはは……。」
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