甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

文字の大きさ
上 下
153 / 154
22

22ー6

しおりを挟む
「でも、同じこと言うけど、争い事は良くないと思うの。きっと、私達が争えば翔子も悲しむ。」

「……で?」
結論を早く言え。
そんな意味の含まれたものだ。

「私が上、梨華ちゃんが下を担当する……それでどう?」

「……。」

「嫌なら逆でも良い。」

「……。」
なるほど。
悪くない折衷案だ。
無言のまま、首を縦に降る梨華であった。

「よしっ、交渉成立。」

「……うん。……あ、そうだ、一個言っておかなきゃいけないことがある……。」
梨華が小声でボソッと呟く。

「うん?何?」
どうしたんだろう?
梨華の言葉を聞き漏らさないように彼女の口元へと自身の耳を近づける。

「確かに私は今、翔子ちゃんしか眼中にない……けど、あんたのことも見てるから……。今度翔子ちゃんを悲しませたらどんな手を使っても必ず後悔させるから……絶対に……。」
ギロリ。
翔子の部屋着を鼻に押しつけながら美成実を睨み付ける梨華。

「……は、はい……。」

スンスン……スンスン……。
二人は翔子が帰ってくるまでの間楽しんだ。


所変わり、放課後の瀬部高校。
オレンジの光に照らされた教室。
そこには翔子と真優だけが残っていた。

遠くの方から声が聞こえる。
運動場を使って部活動をしている生徒達のものだろう。
しかし、それらの喧騒も、彼女らには関係ない。

「……。」

「……。」

無言の二人。
しかし、そこには梨華と美成実の間に流れるような険悪な空気が流れているわけではない。
どちらかと言えば、甘ったるい空気だ。

「今日、弓浜さん来なかったね……。」
最初に口を開いたのは真優であった。

それは美成実を心配した意味で言ったわけではない。
翔子と話す為のきっかけにすぎない。

「そうだね……あはは……。」
苦笑いする翔子。

なるほど。
彼女の反応で分かった。
美成実は何かやらかしたのだろう。

「ど、どうする?もう帰る?」
ここにきて何も話せない。
話題作りも出来ない。
語彙力もまるでない。
憎らしい。
自身のコミュニケーション能力の低さを恨む真優。

「え?も、もう帰る?」

「……んぇ?」
想定外の返事に困惑する真優。

翔子もまた、帰りたくないと思っているのだろうか?
まだ二人きりでいたいというのだろうか?

「そ、その……もうちょっと真優ちゃんと一緒にいたいなぁ……なんて……あはは……。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

蟻喜多利奈のありきたりな日常

あさまる
ライト文芸
※予約投稿にて最終話まで投稿済です。 ※この作品には女性同士の恋愛描写(GL、百合描写)が含まれます。 苦手な方はご遠慮下さい。 この物語は、自称平凡な女子高生蟻喜多利奈の日常の風景を切り取ったものです。 ※この話はフィクションであり、実在する団体や人物等とは一切関係ありません。 誤字脱字等ありましたら、お手数かと存じますが、近況ボードの『誤字脱字等について』のページに記載して頂けると幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

処理中です...