甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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何か手はないか?
手も足も出ないのか?
本当にそうか?

必死に思案する。
しかし、そうしている間にも翔子の愛を一心に受け続ける梨華。

駄目だ。
嫉妬で狂ってしまいそうだ。
きっとそれも、時間の問題だ。

時間の問題?
そうだ。
答えが出た。
この状況を壊す最大の答えだ。

「しょ、翔子!時間!遅刻しちゃう!」
これだ。
いや、これしかない。

「え?あっ!本当だ!」
手を止める翔子。

美成実と梨華はすでに制服に着替え終えている。
しかし、翔子はまだ部屋着のままだ。
着替える必要がある。
悠長にしている場合ではないのだ。

「……。」
無表情。
真顔。
光の消え失せた瞳で美成実を見る梨華。

怖い。
とてつもなく怖い。
しかし、もう引けない。

「ほ、ほら、着替えて?一緒に学校に行こう?」

「う、うん……。」
おずおずと起き上がり、支度をする翔子。

「っ!?」

「っ!?」

驚愕する二人。
突如として服を脱ぎ出した翔子。
制服に着替える為の行動だ。

翔子にとって、それは極々自然な行為であった。
しかし、梨華達にとってはあまりにも刺激の強いものであった。

そのせいだろうか。
彼女らは鼻血を吹き出し、仰向けに倒れてしまうのであった。

「二人ともっ!?」
それが彼女らの聞いた翔子の最後の言葉であった。


「はっ!?」

「ぬぇっ!?」

二人が次に目を覚ました頃には時計の針は両方とも上を向き、太陽が燦々と照っていた。
空腹感とぼんやりと寝惚け眼でふらふらしている。

彼女らは軽い頭痛に顔を歪ませながら起き上がる。
当たり前と言えば当たり前かもしれないが、翔子はもうそこにはいなかった。

ベッドの上にあるのは朝まで彼女が着ていた部屋着。
二人がほぼ同時にそれに気づいた。
そして、両者は互いの思考が手に取るように分かった。

当たり前だ。
双方同じことを考えていたのだ。

それに身を包み、彼女の残り香とぬくもりを楽しむ。
はた迷惑な欲望だ。

「……梨華ちゃん……。」
ボソリ。
美成実が口を開く。
確かにそれは梨華へ向けられたものであった。
しかし、彼女の視線は違う場所へ向けられていた。
翔子の部屋着のある場所だ。

「……。」
梨華も美成実と同じものを見ている。

「私、争い事って良くないと思うの……。」

「……。」

「私と梨華ちゃん、きっと同じこと考えてるよね……。」

「……。」
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