甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「え?……え、翔子……え?」
思いもよらない翔子の言葉に戸惑いを隠せない美成実。

優しい笑み。
まるで聖母のようなものだ。
そんな表情を、翔子が見せている。
今まで美成実が見たことないようなものだ。

そんなものを見せられてしまったら、逆らうわけにはいかない。
その魔力の前では、彼女は無力であった。

真優と美成実。
二人を自身の胸元で抱き締め、微笑んでいる翔子。
その姿はやはり、今までのものとは違うものであった。


「どうかな?二人とも、落ち着いた?」
耳をとおり、二人の脳に直接届くような翔子の声。
それは甘美なもので、彼女らをおかしくさせるには十分であった。

「う、うん、ありがとう翔子さん好き……。私だけのものになって……。」

「……うん。……翔子好き……。もう二度と離さない……。」

「良かった、良かった。二人ともちゃんと落ち着けたみたいだね。」

さりげなくとんでもないことを言っていた二人。
しかし、翔子はそんなこと気にしていないようだった。

「み、見苦しいところを見せてしまった……ごめんね、翔子さん。」
赤面し、俯く真優。

「ごめんね、翔子……。」
目を逸らし、気まずそうな美成実。

「大丈夫だよ、二人の珍しいところが見れて嬉しかったし……美成実ちゃんにも、真優ちゃんにも甘やかしてもらってるから……お互い様だよ。」
えへへ。
照れたような笑みで、翔子はそう言ってみせた。


「……。」

「……。」

落ち着きを取り戻した二人。
自身がどんなことを口走ってしまったかを理解し、無言になってしまった。

無音の時間が続く。
先に仕掛けたのは美成実であった。

「あのっ!翔子!」

「わっ、な、なに?」

「大事な話があるの!」

急にどうしたのだろう?
話しかけられた翔子だけでなく、その場にいる真優もそう思った。

「大事な話……?」

「そう、大事な話。」

「うん、話して?」

「私、また翔子とこうして友達として過ごせて嬉しいんだ……。」

以前も話したことだ。
なぜまたこうして改めて言う必要があるのだろう?
彼女の考えが分からない翔子。

「私も嬉しいよ?」
以前と似たような返事だ。

「それでね……それで……。」
言い辛そうに、もじもじとしている。

なんだ?
すっかり蚊帳の外の真優には、嫌な予感がしていた。
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