甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「……美成実ちゃん?」
美成実にジッと見つめられ、耐えきれなくなったのだろうか。
翔子が口を開く。

「ごめん、なんでもないよ。さ、行こっか。」

「うん!」
スクールバックを背負うと、そのまま二人は手を繋いだまま歩き出した。


道中。
今までの気まずさが嘘のように二人はずっと話していた。

和やかな雰囲気。
そして、大人びた雰囲気の美少女である翔子から幼い笑顔という一見ちぐはぐなもの。
しかし、それは見事なまでにマッチしていた。
それに心奪われ、二度見では済まないほど彼女のことを見ている者も少なくない数いた。


楽しい時間はあっという間。
それを痛感する二人であった。

「私、こっちだから……。」
翔子が口を開く。

「うん。」
知ってる。
中学の頃、よく通ったから覚えているのだ。

「……。」

「……。」

名残惜しい。
この時間がいつまでも続いてほしい。
しかし、そういうわけにはいかない。
そうなれば、今から言うことは決まっているだろう。


「しょ、翔子!」
言え。
言うんだ。
もう大丈夫だ。

「うん?」

「ま、またね!」

「っ!うん!またね、また、明日!」
目を見開き、驚きの表情を浮かべる翔子。
しかし、それも一瞬で、すぐに満面の笑みになった。


「ただいまー!」
きっとその挨拶は、これまでの彼女のものの中で一位二位を争うほど明るく元気なものであっただろう。

「おかえり、翔子ちゃん。」
すぐさま梨華が出迎える。

そんな様子だったからだろう。
すぐに彼女にその異変がバレてしまった。

「えっへへー、ただいま。」
トロンと腑抜けた笑みを浮かべる翔子。

「ふふふ、おかえり。」
同じことを繰り返す。
しかし、梨華はくどいとは思わなかった。


廊下を歩く二人。
そして、リビングへ入る。

「翔子ちゃん?」

「うん?」

「今日、何か良いことあった?」

「え?やっぱり分かっちゃう?」

「分かっちゃうよ、だって私は翔子の妹だもん。」

「そっかー、えへへ……。」

「教えてよー。」
そうだ。
知りたい。
なんだって知りたいのだ。

翔子が何を思っているか。
彼女が何で怒るのか。
何で悲しむのか。
何で喜ぶのか。
それを知り、記憶することで、彼女を守ることが出来る。
情報は多いに越したことはない。
だから求めるのだ。

「しょうがないなぁ……実はね……。」
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