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「そんなことない……。そんなことないよ!翔子といれて、私嬉しかったもん!負担なんかなかった!」
本心だ。
それは飾りなどない、彼女の本物の気持ちだった。
「……はぁ、分かりました。」
ため息をつき、無言だった真優が口を開いた。
「多分、私達いなくても良かったんじゃないかな?」
苦笑いの卯佐子。
こっそりと、真優へ囁く。
「そんなことないですよ。多分、二人きりだとお互いに話すのが恐くて一向に進まなかったと思いますよ?」
「それもそっか。」
「それに……。」
かすかに口角が上がる真優。
「うん?」
「あんな翔子さんを見れたんです。少なくとも私は来た意味、あったと思いますよ?」
真優の視線の先。
そこには、大粒の涙を流しながら微笑む翔子がいた。
彼女は、美成実と抱き合い、幸せそうにしている。
そこにいるのが、自分ではなく美成実であるという事実。
それが不満であるが、逆を言えば、それに目を瞑りさえすれば、真優の満足いく結果になった。
大丈夫。
また奪い取れば良い。
真優の心の中に、純粋かつどす黒い気持ちが渦巻いていた。
「じゃあ私達は戻ろっか。」
「はい、そうですね。」
今はその立場を返してやる。
しかし、必ずまた返り咲いてやる。
美成実をちらりと一瞬見た後、卯佐子とともにその場を去る真優であった。
「……なんか、幸せだけどちょっと疲れちゃったな。」
「ふふふ、私も。……まさかまたこうして美成実ちゃんと話せると思ってなかった……幸せだなぁ……。」
コンクリートの階段。
そこに隣り合って座る美成実と翔子。
彼女らを照らすのは、オレンジ色の夕日。
遠くの方で聞こえていた部活動の音が徐々に小さくなっていた。
そろそろ帰宅しなければいけない時間だ。
名残惜しいが、そうも言ってられない。
先に立ち上がったのは、翔子であった。
「……翔子?」
「そろそろ帰ろっか。」
座っている美成実へ手を差しのべる。
「そうだね。」
微笑みながら、彼女の手を掴み、ゆっくりと立ち上がる美成実。
夕日の逆光。
そして、かすかに吹く風に靡く彼女の髪。
それらが、彼女の美しさをより際立たせた。
翔子に見蕩れてしまう美成実。
そこで、再度実感する。
ようやく、またこうして翔子と向き合えた。
今まで辛いこと、苦しいこともあったが、こうなればもうそんなものはどうでも良い。
些末なことだ。
本心だ。
それは飾りなどない、彼女の本物の気持ちだった。
「……はぁ、分かりました。」
ため息をつき、無言だった真優が口を開いた。
「多分、私達いなくても良かったんじゃないかな?」
苦笑いの卯佐子。
こっそりと、真優へ囁く。
「そんなことないですよ。多分、二人きりだとお互いに話すのが恐くて一向に進まなかったと思いますよ?」
「それもそっか。」
「それに……。」
かすかに口角が上がる真優。
「うん?」
「あんな翔子さんを見れたんです。少なくとも私は来た意味、あったと思いますよ?」
真優の視線の先。
そこには、大粒の涙を流しながら微笑む翔子がいた。
彼女は、美成実と抱き合い、幸せそうにしている。
そこにいるのが、自分ではなく美成実であるという事実。
それが不満であるが、逆を言えば、それに目を瞑りさえすれば、真優の満足いく結果になった。
大丈夫。
また奪い取れば良い。
真優の心の中に、純粋かつどす黒い気持ちが渦巻いていた。
「じゃあ私達は戻ろっか。」
「はい、そうですね。」
今はその立場を返してやる。
しかし、必ずまた返り咲いてやる。
美成実をちらりと一瞬見た後、卯佐子とともにその場を去る真優であった。
「……なんか、幸せだけどちょっと疲れちゃったな。」
「ふふふ、私も。……まさかまたこうして美成実ちゃんと話せると思ってなかった……幸せだなぁ……。」
コンクリートの階段。
そこに隣り合って座る美成実と翔子。
彼女らを照らすのは、オレンジ色の夕日。
遠くの方で聞こえていた部活動の音が徐々に小さくなっていた。
そろそろ帰宅しなければいけない時間だ。
名残惜しいが、そうも言ってられない。
先に立ち上がったのは、翔子であった。
「……翔子?」
「そろそろ帰ろっか。」
座っている美成実へ手を差しのべる。
「そうだね。」
微笑みながら、彼女の手を掴み、ゆっくりと立ち上がる美成実。
夕日の逆光。
そして、かすかに吹く風に靡く彼女の髪。
それらが、彼女の美しさをより際立たせた。
翔子に見蕩れてしまう美成実。
そこで、再度実感する。
ようやく、またこうして翔子と向き合えた。
今まで辛いこと、苦しいこともあったが、こうなればもうそんなものはどうでも良い。
些末なことだ。
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