甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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きっと彼女は無理をしているのだろう。
地面に足が着いていない。
それなのに、勢い良く動くブランコ。

自分が制御することが出来ない。
それが恐いのだろう。
そんな憶測をする翔子。

「もうちょっとだけゆっくりにしようか?」
彼女を気遣っての発言だ。

「だ、大丈夫……です……。このままで……か、構いません。なんだったらその……もう少し早くても……だ、大丈夫……だと思います……。」
そう言う真優の声は、やはり震えている。
そして、力いっぱい鎖を握りしめていた両手もがくがくと震えている。

翔子に対して今まで、ぎこちないなりにも、タメ口を使えていた真優。
しかし、今の彼女にその余裕はなかった。

きっとその発言は嘘だ。
翔子は今の彼女を見てそう思った。
それなら、どう返答するべきか。
どういった行動をすれば良いか。
そんなもの、悩むまでもない。

「そうなの?でも、ごめんね、私から言っておいてなんなんだけど、実はこれ以上早く出来ないんだ。だから、もうちょっとゆっくりにしても良いかな?」
それは嘘だ。
しかし、こう言えば彼女も気にせずに本心を言えるはずだ。
そう思った翔子。

「そ、そういうことなら仕方がないです……ないね。ゆっくりにしよう。」
にっこり。
安心したのか、穏やかな声、そして笑顔になる真優。

「うん、ありがとう。真優ちゃん、優しいね。」

「そんなこと、ないよ。」

「そんなことあるよ、こんな私の隣にずっと一緒にいてくれたんだもん、優しいよ……。」

「前も話したことなんだけど……。」
ポツリ。
呟く真優。

「……?」
彼女の一言一句を逃さないよう、集中して聞く翔子。

これは隣合って話をした方が良い。
翔子はそう思い、彼女と乗っていたブランコを降りて隣のブランコに移動した。
なるべく視線を合わせたい。
身長差で全く同じ目線は無理だが、同じように座ることでなるべく合わせよう。
彼女はそう思ったのだった。

「私と翔子さん、似てるって思ったんですよ。」

「そうだね、そんな話もしたね。」
ふふふ。
微笑む翔子。

二人だけで共有出来る話題。
他者となら、触れられたくないようなものでも、真優となら嬉しかった。

「お互い、見た目と中身のギャップに苦しんでるっていう点が……もちろん、皆大なり小なりそういうので悩んでいると思うんです。」
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