甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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二人きりで歩く翔子と真優。
隣合う二人は、その肩と肩、指と指がぶつかりそうな距離まで近かった。


「ど、どうでしょう、やはり、あの人はまだ苦手ですか?」
真優はそう言い終えてから、後悔した。

当たり前だ。
彼女のせいで翔子は今まで本来の自分を殺して過ごしていたのだ。
苦手に決まっている。

「え、えっと……。苦手……なのかな?ごめん、分かんない。」

「そ、そっか……すみま、ごめんね。」
やはりぎこちない。
タメ口に未だに慣れていないようだ。

「だ、大丈夫。」

「……。」

「……。」

無言。
今朝とは違った気まずさが二人の間に流れていた。

「え、えっと……こ、公園……。」

「うん?」

「公園行きませんか?」

「こ、公園に?」
どうしたのだろう?
なぜそんな提案をするのだろう?
真優の真意が分からない翔子であった。

「その……このまま帰るのは嫌なんで……。」
ぼそり。
呟く真優。

「っ!?」
心臓を鷲掴みされるような感覚。
決して不快ではなく、むしろ逆。
より味わいたくなるような中毒性のあるそれに、胸がときめく翔子。

その幼い容姿とは不釣り合いな落ち着いた性格。
それが、ひっくり返った。
もとい、見た目と中身。
その二つが合致したのだ。

その威力、絶大。
翔子の心を鷲掴みした。

ごくり。
どんな感情なのか。
翔子自身にも分からない。
しかし、そんな真優の姿を見て生唾を飲んでしまった。

「駄目……かな?」

そんなもの、返答は決まっている。
「大丈夫だよ。」

今の翔子には、彼女の要求を拒むことは出来なかった。
彼女の為なら、きっとどんなことでもするだろう。

もちろん、彼女がそんな酷いことを言うわけがない。
しかし、もしもの話。
もしもの話だ。
もしも、彼女がここで、翔子に命を投げ捨てろと言ったとしても、行動に移すだろう。
もしも、彼女がここでキスをしろと言ったとしても、翔子はしただろう。

それほどに、今の真優は魅力的であった。
それほどに、今の彼女は耽美であったのだ。


二人が辿り着いたのは、小さな公園であった。
遊具も、ブランコしかないような場所だ。

「……。」
無言で歩いていく真優。
その後ろをついていく翔子。

ちょこん。
ブランコに座る真優。

「……?」
ブランコで遊ぶのだろうか?
彼女も、真優に倣って隣のブランコに座る。
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