甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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彼女の目を気にしなくても良い。
きっと、そう思ったのだろう。
クラスメイト達がわっと美成実の元へ集まる。
転校生というのは、やはり注目の的のようだ。

「弓浜さん!前はどの高校にいたの?」

隣の席に座っている真優。
その為、彼女へ向けられた質問は当然彼女の耳にも届く。
さらに言えば、翔子の耳にも届いていた。
担任教諭の言葉よりもしっかりと聞こえる。

どう答えるのだろうか?
興味がある真優。

「そ、その……一応白鳳院に……。」

その言葉にざわついていた教室内が、一層騒がしくなる。
白鳳院女子高等学校。
皆が知っている超名門の所謂お嬢様校だ。

そんなところからなぜわざわざここに転校して来たのか。
皆が気になっているのは、そこであった。


授業を受けるも、皆そわそわしている。
浮き足だっていた。
理由など分かりきっている。
美成実のせいだ。

内心安堵する真優。
そのまま彼女をクラスメイト達が足止めしておいてくれれば、翔子に何か危害を加えるという事態にはならないだろう。
そう考えたからだ。

輪に入らない翔子。
皮肉なことに、美成実が転校して来たお陰で、ゆっくりとした時間を過ごせていた。

これならいけるかもしれない。
今よりも、真優に近づけるかもしれない。
美成実がいるのは恐い。
それは、今も変わらない。
しかし、今の自分には真優がいる。
それに、今のクラスメイト達は自身に友好的だ。

そうだ。
あの時とは違うのだ。
だから大丈夫。
大丈夫なのだ。

それなのに、なぜだろう。
翔子は疑問であった。

なぜ、未だに手が震えるのだろう。
なぜ、運動もしていないのに、ドクンドクンと心臓がうるさく騒ぐのだろう。

分からない。
分かりたくない。
そう、克服したのだ。
だからこの感覚は違う。
偽物だ。
錯覚だ。


時は進み、昼休みとなった。
いつもは翔子の元へばかり集まるクラスメイト達も、今日ばかりは違った。
大半が美成実の元へと向かっていた。

「翔子さん、お昼食べましょう。」
翔子の前に来た者。
それは、真優であった。

その顔を見ると、今までの曇っていたものが追い払われた。
安堵感。
つい笑顔になってしまう。

「うん!」


放課後。
相変わらず美成実の周りにはクラスメイト達が集まっている。

現金なものだな。
彼らを見て、そんなことを思う真優。
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