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「い、いえ……特にないんじゃないですか?」
言えるわけがない。
彼女の暴かれたくない過去。
そんなもの、他人である自分が言い広めて良いわけがないのだ。
今の彼女が受け入れられている。
それならば、それで良いではないか。
今さら掘り返さなくて良い。
そんな必要などはない。
「そっか、まぁ、言えるようになったら教えてね。」
「……え?あの……。」
「……ごめん、何かあったのなんて誰が見ても分かるよ。」
苦笑い。
周囲も似たような様子であった。
皆、翔子に何かあったということは分かっていた。
しかし、それが何かが分からない。
その為、どう接すれば解決するのか分からなかったのだ。
翔子と真優は仲が良い。
そんなもの、このクラスの生徒ならばすぐに分かるものであった。
だから、彼女に翔子を任せようとしたのだ。
今回、彼女に詳細を聞いてしまったのは、興味本位だ。
しかし、皆翔子が元気のないことを気にしていた。
放課後。
「……よしっ!」
パン。
両頬を、両手ではたく真優。
席から立ち上がる。
彼女の目指す場所。
それは、翔子の席だ。
上の空。
翔子の机の上には、依然として先ほどまで行われていた授業の用意が置かれていた。
「……。」
焦点が合っていない翔子の瞳。
そんな姿すらも画になる。
「しょ、翔子さん……?」
「……。」
「お、おーい……。」
「……。」
恐る恐る声をかける真優。
しかし、翔子から返ってくる言葉はない。
周囲からの視線を感じる真優。
クラスメイト達が彼女を見ていた。
それらは全て、期待と不安の混ざったものだ。
ここは少し手荒な手段を取るべきだろう。
気合いを入れる真優。
とはいえ、今から彼女が行うことは、乱暴なことではない。
「失礼します……!」
自身の両手を翔子の頬へ持っていく真優。
ぷにっ。
ぷにぷに……。
「……ふぇ?……にゃひ?」
頬への刺激。
流石に反応した翔子。
「気がつきました?」
そう言うと、真優は翔子の頬から自身の手を離した。
「……え?あっ、うん。」
「えっと……しょ、しょ……翔子さん!」
勇気を振り絞り、声を出す真優。
「は、はいっ!何でしょうか?」
びくっ。
突然の大声に驚く翔子。
つい、真優のような話し方になってしまう。
「……な、何か出来ませんか?」
「え?なに?」
聞き返す翔子。
言えるわけがない。
彼女の暴かれたくない過去。
そんなもの、他人である自分が言い広めて良いわけがないのだ。
今の彼女が受け入れられている。
それならば、それで良いではないか。
今さら掘り返さなくて良い。
そんな必要などはない。
「そっか、まぁ、言えるようになったら教えてね。」
「……え?あの……。」
「……ごめん、何かあったのなんて誰が見ても分かるよ。」
苦笑い。
周囲も似たような様子であった。
皆、翔子に何かあったということは分かっていた。
しかし、それが何かが分からない。
その為、どう接すれば解決するのか分からなかったのだ。
翔子と真優は仲が良い。
そんなもの、このクラスの生徒ならばすぐに分かるものであった。
だから、彼女に翔子を任せようとしたのだ。
今回、彼女に詳細を聞いてしまったのは、興味本位だ。
しかし、皆翔子が元気のないことを気にしていた。
放課後。
「……よしっ!」
パン。
両頬を、両手ではたく真優。
席から立ち上がる。
彼女の目指す場所。
それは、翔子の席だ。
上の空。
翔子の机の上には、依然として先ほどまで行われていた授業の用意が置かれていた。
「……。」
焦点が合っていない翔子の瞳。
そんな姿すらも画になる。
「しょ、翔子さん……?」
「……。」
「お、おーい……。」
「……。」
恐る恐る声をかける真優。
しかし、翔子から返ってくる言葉はない。
周囲からの視線を感じる真優。
クラスメイト達が彼女を見ていた。
それらは全て、期待と不安の混ざったものだ。
ここは少し手荒な手段を取るべきだろう。
気合いを入れる真優。
とはいえ、今から彼女が行うことは、乱暴なことではない。
「失礼します……!」
自身の両手を翔子の頬へ持っていく真優。
ぷにっ。
ぷにぷに……。
「……ふぇ?……にゃひ?」
頬への刺激。
流石に反応した翔子。
「気がつきました?」
そう言うと、真優は翔子の頬から自身の手を離した。
「……え?あっ、うん。」
「えっと……しょ、しょ……翔子さん!」
勇気を振り絞り、声を出す真優。
「は、はいっ!何でしょうか?」
びくっ。
突然の大声に驚く翔子。
つい、真優のような話し方になってしまう。
「……な、何か出来ませんか?」
「え?なに?」
聞き返す翔子。
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