甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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いつもとは明らかに違う雰囲気。
それに気づいたのは、先を歩く翔子であった。


「……?」
誰も挨拶をしない。
皆、周りで彼女のことを見ているだけだ。

今まで自身から挨拶をする機会が滅多になかった翔子。
どのようにすれば自然に挨拶をすることが出来るのかが分からなかった。


「……あれ?」
今までと違う。
校門を潜った美成実も、すぐにその異変に気づいた。

「お、おはよう、美成実。」
昨日も彼女に挨拶をしたクラスメイト。
今日も彼女から挨拶を行った。
しかし、どこかぎこちない。



「おはよう。どうしたの?」
直球。
翔子のこと以外は簡潔に済ませたい。
そんな彼女の気持ちが表れた態度であった。

「い、いや……。」
言いずらそうにしている。

イライラ。
腹が立つ。
早く言え。
「良いよ、大丈夫だからはっきり言って?」

「うん……。えっと、昨日さ、放課後市役所近くの公園にいた?」

市役所の近所にある公園。
それは、確かに彼女と翔子が昨日訪れていた場所だ。

「え、えっと……なんで?」
動揺。
美成実の声が震える。

なぜそんなことを聞くのだろう。
ドクンドクン。
嫌な暴れ方をする自身の心臓の音がうるさい。

「え、えっと……あはは……。」
苦笑い。
恐らく、今の彼女の様子から察したのだろう。

誤魔化すな。
勿体振るな。
「ねぇ。」

「う、うん。いや、噂なんだけどね?」


結論。
昨日の放課後、翔子と公園へ向かったのを見られていた。
それだけならば良い。
言い訳などいくらでも出来る。
誤魔化すことも可能だ。
しかし、それは不可能であった。

見られていたのだ。
美成実に甘える翔子の姿。
それをクラスメイトの一人に見られていた。


そのあまりにも普段のイメージかけ離れた姿。
それにショックを受けたその目撃者は、瞬く間にそれを広めていった。
それは悪意のあるものであった。

「……ショックだなぁ……。海部江さんそんな子だったんだ……。」

「うん、がっかりした……。」


口々に言う。
それは美成実の耳にも届いていた。

勝手なことを言うな。
お前らに何が分かる。
怒りで唇が震える。
今の美成実には、正常な判断が出来なかった。

我慢の限界。
それを自覚する前に、美成実の視界は真っ白になった。


悲鳴。
怒号。
とてもいつもの平和な教室ではあり得ないような惨状が広がっていた。
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