甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「うん、そうなんだよー、翔子ちゃんまだ来てないんだよね。珍しいこともあるもんだね。」
へらへらと言う。

彼女はまだ来ていないのか。
おかしいなこともあるのだな。
真優には、それに違和感があった。

いつも早く登校し、自身の席に座っている翔子。
そんな彼女が、今日に限ってまだ来ていない。

どうしたのだろうか?
まさか、寝坊か?

珍しいことではあるが、そんなものならば良い。
しかし、彼女のことだ。
何らかの事件に巻き込まれていたとしてもおかしくない。

以前、彼女が中学生の頃のクラスメイトに出会った時だ。
そのことを、真優は思い出していた。

弱々しく抵抗するしか出来なかった翔子。
そんなものは無意味であり、すぐに囲まれていってしまった。
そして、あれよあれよと連れて行かれそうになっていた。
そうでなくとも声をかけられやすい。

ネガティブな想像。
そのようなマイナスなものは、一度考え出してしまえば次々と出て来てしまうものだ。
真優もその例外ではなかった。

何かあってからでは遅い。


「……真優ちゃん?」
クラスメイトの声。
それは驚きから出たものであった。

突如立ち上がった真優。
彼女の突然の行動。
それに、教室中の視線が集まる。

「……あっ。」
思わず立ち上がってしまった。
自身でも、その理由が全く分からない真優。

「ど、どうしたの?」

「大丈夫?忘れ物?」

皆が心配している。
その声を聞けば聞くほど慌ててしまう真優。

「いや……その、なんでしょうね?……あはは……。」
ゆっくり座る真優。
それにより、皆の視線は散らばり、元に戻った。


そわそわ、そわそわ……。
クラスメイト達が登校して来る。
しかし、翔子の姿は未だにない。
落ち着かない真優。


チャイムが鳴った。
結局、翔子が教室に来ることはなかった。

一時間目が始まった。
教科担任の声が、真優の耳に届く。
しかし、それは彼女の頭に着く前に右から左へと流れていってしまった。

心ここにあらず。
ノートを書く為に真優の手に持たれたシャープペンは、先ほどから一切動いていない。
その為、もちろん彼女のノートは白紙のままである。

「……真優ちゃん?」

「うん?」

「大丈夫?」

「うん。」
真優は、声に反応しているだけであった。
普段使っている敬語ではなかった。

「あー、こりゃあ駄目だね。」
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