甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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電車に揺られる翔子。
真優の呟きが気になっていた彼女。
そのことを考えていたからだろうか。
寝不足気味であった。

こくりこくり……。
船を漕ぐような翔子。

あぁ、駄目だ。
我慢出来ない。
瞼が重くなっていく。
瞬きの間隔が短くなっていき、目を瞑っている時間が長くなっていく。


「……かにっ!?」
しまった。
寝てしまった。
ハッとして飛び起きた翔子。

結論。
時既に遅し。
見たことのない駅にまで来てしまっていた翔子であった。

ホームへ小走りで飛び出た。
部活の朝練の為に登校して来た学生も降りている。
彼らの着ている制服は、翔子の見たことのないものであった。

戻るか?
脳裏を過る。
しかし、それは出来ない。


「……ここ、どこだろ……。」
不安から漏れでた翔子の呟き。

駅から出た翔子。
やはりそこも見たことのない景色が広がっていた。

まず翔子の目に飛び込んだバスのロータリー。
翔子の地元では見たことのないほどの大きさだ。
そこにも人が大勢いる。

視線を感じる。
皆がジロジロと見ている。
それは、翔子にも分かるほどであった。

どうしよう。
見知らぬ土地。
周囲の好奇の目。
不安に押し潰されそうになる翔子。

「あ、あのー……。」

「っ!?」
びくっ!
驚きのあまり小さく飛び上がってしまう翔子。
背後から声をかけられた。
彼女の予期していないものであった。

「ご、ごめん。……その、大丈夫?何かキョロキョロしてたから……。」

目の前には翔子よりも少し年上と思われる女性。
翔子のセンスでは分からない洒落た服を着ている。

「ひ、ひぇ……お洒落なお姉さんだ……。」
恐い。
都会の人だ。
腰が抜けそうなほど恐怖している翔子。

「あははっ!ありがとう。それで、どうしたの?お姉さんに言ってみ?」

信用しても良いのだろうか?
翔子の脳裏に、過去に言われた梨華の声が過る。

翔子ちゃん、可愛いんだから色々な人が声をかけると思うけど、知らない人について行っては駄目だよ?

「い、いえ、何でもないです……。あはは……。」

「おっ、あなた瀬部高の子なの?懐かしいなぁ……。」

瀬部高。
翔子の通う瀬部高等学校の略称だ。

「えっ、そ、そうですけど……。懐かしい?」

「そうだよ、私瀬部高のOGなんだー。」

「そうなんですか!?」
一気にテンションが上がる翔子。
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