甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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ふと、我に帰り、冷静になった宇佐子。
そのおかげで彼女には分かることがあった。

第三者から見た今の自分。
とても怪しい。
その姿はまるで、翔子の後をつけるストーカーのようだ。
いや、ようだではない。
ストーカーそのものだ。

しまった。
そんなことなど、今はどうでも良い。
些末なことだ。

今は彼女を追わなくてはならない。
見失ってはいけないのだ。
誰に指示されたわけでもない。
それでもそう思う卯佐子であった。

「あっ、ごめん!海部江さん動き出したからまた今度ね!」
早々に切り上げよう。
申し訳ないが、今はこの子の相手をしている場合ではない。
そう思った卯佐子。

「え?雨枝?……あっ、そっか、海部江さんか……。わ、私も行きます!ちょっと待って下さい!」
慌ててそう言う真優。
二人はすぐに移動した。


カラオケ店。
よし、ここだ。
目的地に着いた。

翔子の後を追い、店内へ入る二人。
キョロキョロ。
自称翔子のクラスメイト。

どうしたのだろう?
もしかして、彼女はこのような場所に来るのは初めてなのだろうか?
「……ほら、行くよ。」

ここまで一緒に来てしまったのだ。
仕方がない。
旅は道連れと言う。
彼女も連れていこう。

「……え?」

「早く早く。部屋とったから。」
決まった。
我ながらクールだ。
そう思う卯佐子であった。

「……。」
無言の少女。

いや、そんな目で見ないでくれ。
少し恥ずかしくなる卯佐子。

「もう!あの子のこと心配なんでしょ!?早く!」
誤魔化す為に少し声を荒らげた卯佐子。


密室。
見知らぬ人物と二人きりになってしまった。

どうしよう。
バクバクバクバク……。

「……名前。」

「え?」

「名前教えてよ。私は風野。風野卯佐子。二年生だよ。歳上なんだ、意外だなーなんて思わないでね。」

「あ、あぁ……。えっと、雨枝です。雨枝真優。……その、海部江さんのクラスメイトです。」

「そっか。あの子のクラスメイトなんだね。」
先ほども聞いた。
それでもやはり、疑わしい。

卯佐子の目の前にいる真優。
どう頑張って見ても中学生にしか見えない。

無言。
卯佐子の耳に届くのは、広告の音声と、隣の部屋の歌声であった。


何か話題はないだろうか?
何か……。
「あっ、そう言えば……これ余談だよ?本当にただの余談なんだけどさ、この隣って……。」
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