甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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目の前に現れた絶世の美女。
彼女のような存在をそういうのだろう。

「海部江さん、早く早くー!こっちだよー!」
目の前の彼女を呼ぶ声。
楽しげであり、誇らしげでもあった。

気にし過ぎなのかもしれない。
それでも、それは彼女と知り合いであると誇示するような声色であった。

海部江。
間違いない。
探していたのは彼女だ。

「ご、ごめんね、今行くよ。」
透き通るような美しい声。
耳に心地良い。

自身に向けられたわけではない。
羨ましい。
その声を向けられる人間に嫉妬してしまう。

「あ、あのっ!」
駄目だ。
ここで別れるわけにはいかない。

もっと話したい。
もっと見たい。
もっと彼女を知りたい。

「すみません、急いでるので……。失礼します。」

「え?あっ、ちょっ!?」
焦りのせいだろうか。
上手く言葉が出なかった。

どうすべきか?
考えるまでもない。
逸る気持ちを抑えられない。
決して走るわけではない。
それでも卯佐子の歩みは自然と早くなった。


良かった。
すぐに追いつくことが出来た。
安堵する卯佐子。

翔子の後ろ姿についていく。
正面から見ていない。
それでも、そんな姿でも美しく見惚れてしまった。

もっと見たい。
見飽きない。
むしろ、もっと近くで見たい。
そんなことを思う卯佐子。

先ほどまでの疲労感などそこにはなかった。
卯佐子の足が更に早くなっていく。


「あっ……。」

何だろう?
恐らく自身へ向けられた声。

「……え?」
つい、反応して声が出てしまう卯佐子。

「あ、お、同じ制服ですね……。あはは……。」
気まずそうに笑う声の主。

人のことを決して言えるような立場ではない。
そんなこと、卯佐子自身が一番良く知っている。
それでも思ってしまうことがある。

小柄な彼女が着ている制服。
それは、自分と同じ高校のものだ。
不釣り合い。
制服に着られている。
まさに彼女のことを言うのだろう。


「え?ど、どうも……。そ、そうですね……。」
困惑してしまう宇佐子。
なんとか出たのがそのような言葉であった。

「……えっと、怪しい者ではないです。その……あなたが後を追っていた子のクラクメイトです。」

そうなのか。
少し驚く卯佐子。

つまり、やはり彼女は正真正銘高校生であるということだ。

「……え?あっ、いや、私こそ、怪しい者では……な、ないよ?」
あはは。
苦笑いしてしまう。
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