甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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まさか……。
何かを感じ取り、周囲に集まる彼らを見る卯佐子。

そこにいる大半は、卯佐子達と同じ学年の生徒であったり、三年生であった。
つまり、本来ここにいるべき者達ではない者が集まっているということになる。

皆考えることは同じなのか……。
しかし、刺激の少ないこのマンネリ化した毎日だ。
そんな日々を過ごしていては、仕方のないことかもしれない。
まぁ、かくいう自分もそうなのだが……。
つい苦笑いしてしまう卯佐子であった。

「こ、これは予想外だね……。人多過ぎ……。」

「……皆考えることは同じみたい……。」

「……あはは、そうだね。どうする?」
二人に賛同する卯佐子。
そして、この後のことをどうするか投げかけた。

このまま粘るのであれば、共に残ろう。
そうでないのであれば、彼女らと教室に戻ろう。
卯佐子はそう思うのであった。

「うーん、私は一度見たしなぁ。」

「そうだね、私も……。このまま粘っても授業に間に合わなくなるかもしれないし……。」

なんだ。
思ったよりも執着していないのだな。
「なら戻ろっか。」

後で見に来れば良い。
卯佐子はその程度に考えていた。

そして、気づいたら一ヶ月近く経過していた。

よし。
今日こそだ。
今日こそ会いに行こう。

放課後。
そそくさと帰宅仕度し、一年生の教室へ向かおうとする卯佐子。

「おっ?うさちゃん、海部江さんを見に行くの?」

「うん。やっぱりそんなに噂になるくらいならば一回は見ないとね!」


ずんずん。
進んでいく卯佐子。

次第に減っていった野次馬。
今となってはその人数も片手で数えられるほどになっていた。
これならばいける。


すうーっ。
深呼吸。
自身の緊張を落ち着かせる為だ。
しかし、それだけではない。

「たっ、たのもー!!」
教室に響く卯佐子の声。

大声を出す為には空気が必要だ。
その為の深呼吸でもあった。


未だに教室に残っている生徒達の視線が卯佐子へ向けられた。
これほど注目を浴びることなどない。
心臓が高鳴るのが分かる。

「あっ、うさちゃん先輩だ!」

「え?あっ、本当だ!うさちゃん先輩だ!ちっちゃくて可愛いー。今日はどうしたんですかぁ?飴なめます?」

一年生に囲まれる。
下級生とはいえ、集まるとなかなか威圧感がある。
それはきっと、彼女の身長が周りよりも低いことも原因かもしれない。
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