甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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卯佐子の視界がはっきりしだした。
目の前の女性は、彼女と同じ制服を着ている。

二人の目が合った。
少なくとも、卯佐子はそう思った。

なんて綺麗な人だろう。
卯佐子のふわふわと夢心地な思考で出たものが、それであった。

「海部江さん、早く早くー!こっちだよー!」
少し離れた場所から呼ぶ声。

「ご、ごめんね、今行くよ。」
声に反応する女性。
弱々しくも、その美貌に合う綺麗な声であった。

海部江さん。
確かに彼女はそう呼ばれた。
そして、その見た目は、道行く人が二度見するほどの美女。

間違いない。
腰は抜かさなかった。
しかし、探していたのは彼女だ。

「あ、あのっ!」

「すみません、急いでるので……。失礼します。」
卯佐子の声を遮る女性もとい、翔子。
頭を下げ、その場から去って行ってしまった。

「え?あっ、ちょっ!?」
上手く言葉が出ない。
段々小さくなる翔子の背中。
それをその場で見ているしか出来ない卯佐子であった。


もっと彼女のことを知りたい。
ならば、どうすれば良いか。
後を追うしかない。
そんなことが頭に浮かぶ卯佐子。
すぐさま行動に移すのであった。

一方その頃の真優。
人の流れに逆走しているからだろうか。
街中を進むが、思うように動けない。

イライラが募る。
なぜ彼女の連絡先を聞いておかなかったのか。
なぜ強引にでも、彼女に着いていかなかったのか。

どこに向かったのかすら分からない。
カラオケ店をしらみ潰しに探すか?
そんなもの、常識的ではないだろう。

「……うん?」
妙なものを見つけた真優。

彼女の視線の先には、一人の少女。
それだけならば、特段妙なものというわけではないだろう。
問題は、彼女の動きであった。

人や物にこそこそと隠れながら、ある一点を見つめて進んでいる。
それは動いているのだろう、彼女もそれに合わせて右へ左へ奇妙に動いている。

一体何をしているのだ?
真優は彼女のそんな様子を疑問に思い、その少女の視線を追う。

すると、いた。
彼女だ。
翔子がそこにいたのだ。

なぜ彼女を見ている?
あんな小柄な少女の知り合いなど、いないはずだ。

ぺたぺた……。
自身の身体を触る真優。

「……くっそ……。まじかよ……。」
ぼそり。
つい出てしまったノンフィルターの本音。

前言撤回。
真優自身を除いて、だ。
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