甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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「じゃあ本当に帰って下さいね。」
それは、何も言えない美成実への言葉。
彼女へ向けられた梨華の追撃であった。
そして、扉は閉ざされた。


「……梨華ちゃん、誰だったの?お客さん?」
梨華の耳に届く声。
普段ならば嬉しい。
しかし、今はタイミングが悪い。

「っ!?」
びくっ。
突然声をかけられ、驚く梨華。

「だ、大丈夫だった?」
心配そうに眉を八の字に垂らす。

そんな顔をしないで。
悲しそうにしないで。
「え、あ、うん。……大丈夫だよ。ピンポンダッシュだったみたい。だから安心して?」

「でも大きな声だしてたし……。」

「大丈夫だって。ね?翔子ちゃんも早く準備しないと遅刻しちゃうよ?」

「う、うん……。」
とぼとぼ……。
素直にその場を離れるのであった。

良かった。
ばれてない。
一安心。
梨華の口からため息が漏れた。

もうあんな顔は見たくない。
あんな悲しそうな翔子など、二度と見たくはないのだ。
その為ならば、何だってする。
たとえそれが翔子の親友だった人物だろうと、排除だってしてやる。


結局、美成実は登校することはなかった。
かと言って、自宅に戻るわけにもいかない。

「白鳳院の子だ!」

「本当だ!綺麗ー。」

駄目だ。
歩き回っていたら周囲に注目されてしまう。
ならばどうする?
そう考えた美成実。
その結果、彼女が導きだした答え。

「では、202号です。ドリンクはご自身でお願いします。」

「はい。」

カラオケ店に来ていた。
そこでも、やはり視線が気になった。
しかし、白鳳院の制服を着ているからではないはずだ。
平日の日中にこんな場所にいるからだ。
そのはずだ。
だから大丈夫。
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