甘え嬢ずな海部江さん。

あさまる

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翌日。
目が覚めた美成実。
いつものような鬱屈とした気持ちではない。
それは、ある決意をしたからだろう。

制服に着替る。
そして、外へと向かう。
いつもと同じ時間に出かけた為、彼女の家族に怪しまれることはなかった。
しかし、彼女はそのまま登校するわけではない。
彼女の高校が目的地ではないのだ。

歩いて十分ほどした頃、彼女の目指していた場所が見えてきた。
良かった。
安堵する美成実。

数年ぶりに来た。
それなのに、迷わずにきちんと来れた。
それに、久しぶりなはずなのに、全く変わっていない。

色褪せていたはずの思い出。
それが一気に輝きを取り戻した。

すうーっ。
深呼吸する美成実。

よし、行こう。
決心がついた。

一軒の民家。
そこのインターホンを鳴らす。


ドキドキ。
期待と不安に心臓が高鳴る。
会いたい。
早く声が聞きたい。

ガチャリ。
開かれた玄関の扉。

チェーンで短く開かれた隙間から覗く人物。
彼女へ声をかける。
「しょ、翔子っ……!」

「……こんな早朝に迷惑ですよ。」

出迎えた少女。
そこにいた彼女は、美成実が期待した人物ではなかった。

「……り、梨華ちゃん……。こ、この間振りだね。……あはは……げ、元気だった?」

梨華。
彼女が会いたいと思っている人物である翔子の妹である。
そして、それと同時に今彼女が最も会いたくない人物だ。

「……私に元気があろうがなかろうがあなたには関係ないんじゃないですか?……それよりも家にまで押しかけてなんですか?頭どうかしてるんじゃないですか?」
ギロリ。
冷たく鋭い視線。
それは翔子には決してすることのないものだ。

「で、でも……。」

「でも?でもなんですか?」
はぁ。
ため息をつく梨華。
心底呆れているようだ。

「お願い、一度で良いの。一度で良いから翔子に会わせて。」

「……いい加減にしてもらえませんか?警察呼びますよ?」

「り、梨華ちゃん!お願いっ!翔子に会わせてよっ!」

「っ!?大声出さないでっ!翔子ちゃんに聞こえたらどうするのっ!」

「っ!」

「もう本当に帰って下さい!あなたのせいで翔子ちゃんはっ……!」
声を荒らげる梨華。
しかし、言い淀んだ。

梨華の言葉。
それに、美成実の脳内に中学生時代の記憶が甦る。

自身のした取り返しのつかない行為。
そのせいで翔子が変わってしまった。
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